Santa Lab's Blog


2017年 04月 02日 ( 1 )



「太平記」大内裏造営の事付聖廟の御事(その17)

僧正そうじやうの曰はく、「貴方きはうと与愚僧師資ししの儀雖不浅、君と与臣上下之礼なほ深し。勅請ちよくしやうの旨一往いちわう雖辞申、及度々いかでか参内仕らで候ふべき」と被申けるに、菅丞相御気色俄かに損じて御さかなにありける柘榴じやくろを取つて噛みくだき、持仏堂ぢぶつだうの妻戸にさつと吹き懸けさせ給ひければ、柘榴のさね猛火みやうくわと成つて妻戸に燃え付きけるを、僧正少しも不騒、向燃火灑水しやすゐの印を結ばれければ、猛火忽ちに消えて妻戸は半ば焦げたる許りなり。この妻戸今に伝はつて在山門とぞうけたまはる。




僧正(尊意)が申して、「そなたと愚僧は師資([師匠と弟子])の儀浅からずといえども、君(第六十代醍醐天皇)と臣の上下の礼はなおも深いものであろう。勅請の旨一往辞し申したところで、度々に及んでは参内仕らぬ訳にはいかぬ」と申せば、菅丞相(菅原道真)は気色をにわかに損じて肴の柘榴を取って噛み砕き、持仏堂の妻戸にさっと吹き懸けると、柘榴の核は猛火となって妻戸に燃え付きました、僧正は少しも騒がず、燃火に向かい灑水([特に密教の儀礼を 実行する前に、特別に準備した水を、その場所や器具を浄化するために注ぐこと])の印を結べば、猛火はたちまちに消えて妻戸は半ば焦げただけでした。この妻戸は今に伝わって山門(延暦寺)にあると聞いています。


続く


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by santalab | 2017-04-02 08:19 | 太平記 | Comments(0)

    

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