Santa Lab's Blog


2017年 05月 04日 ( 2 )



「太平記」北山殿謀反の事(その7)

定平さだひら朝臣先づ大納言殿に対面あつて、穏やかに事の子細を被演ければ、大納言殿涙を押さへてのたまひけるは、「公宗きんむね不肖ふせうの身なりといへども、故中宮の御好みに依つて、官禄くわんろくともに人に不下、これ偏へに明王慈恵みやうわうじけい恩幸おんかうなれば、いかでか居陰折枝、汲流濁源志可存候ふ。つらつら事のやうを案ずるに、当家数代たうけすだいの間官爵くわんしやく人に超へ、恩禄身に余れる間、あるひは清花せいぐわの家これをねたみ、あるひは名家のともがらこれをそねrt>んで、如何様種々しゆじゆの讒言を構へ、様々の虚説きよぜつを成して、当家たうけを失はんと仕るかとこそ思えて候へ。乍去天鑑真、虚名いつまでか可掠上聞候ふなれば、先づ召しに随つて陣下ぢんかに参じ、犯否ぼんびの御糺明きうめいあふぎ候ふべし。但し俊季としすゑに於いては、今朝已に逐電候ひぬる間召し具するに不及」とぞのたまひける。




定平朝臣(中院定平)はまず大納言殿(西園寺公宗きんむね)と対面して、穏やかに事の子細を訊ねると、大納言殿は涙を押さえて申すには、「この公宗不肖の身とは申せ、故中宮(第九十六代後醍醐天皇中宮、西園寺禧子きし)の好みによって、官禄ともに人に下らず、これはひとえに明王(不動明王)慈恵(慈恵大師=良源。平安時代の僧)の恩幸によるものよ、どうして陰に居て枝を折らねばならぬのだ([陰に居て枝を折る]=[恩を受けた人にあだをすることのたとえ])、流れを汲む([その系統や流派を受け継ぐ])その源を汚す気などさらさらござらぬ。よくよく事の次第を案ずるに、当家が数代の間官爵は人に越え、恩禄は身に余っておるので、あるいは清華家([最上位の摂家に次ぎ、大臣家の上の序列に位置する。大臣・大将を兼ねて太政大臣になることのできる七家。久我・三条・ 西園寺・徳大寺・花山院・大炊御門・今出川])がこれを妬み、あるいは名家の者どもがこれを猜んで、おそらくは種々の讒言を構え、様々の虚説をなして、当家を失おうと謀ったのではないか。とは申せ天に嘘はない。虚名がいつまでも上聞に及ぶことはあるまい、まずは召しに従ってに参じ、犯否の糺明([罪や不正を糾問し、真相を明らかにすること])を仰ごうではないか。ただし俊季(橋本俊季)は、今朝すでに逐電([すばやく逃げて行方をくらますこと])上は連れて参ることは叶わぬ」と申しました。


続く


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by santalab | 2017-05-04 08:58 | 太平記 | Comments(0)


「太平記」武蔵野合戦の事(その9)

新田兵衛ひやうゑの佐すけと脇屋左衛門さゑもんの佐とは一所に成つて、白旗一揆が二三万騎にさんまんぎ北に分かれて引きけるを、これぞ将軍にておはすらん。いづくまでも追つめて討たんとて、五十ごじふ余町よちやう迄追つ懸けて行く処に、降参の者どもが馬より下り、各々対面して色代しけるほどに、これに会尺ゑしやくせんと、所々にて馬を控へ会尺し給ひける間、軍勢は皆ぐるを追つて東西へ隔たりぬ。義興よしおき義治よしはるとわづかに三百余騎に成つてぞをおはしける。




新田兵衛佐(新田義興。新田義貞の次男)と脇屋左衛門佐(脇屋義治。新田義貞の弟、脇屋義助よしすけの子)は一所になって、白旗一揆が二三万騎北に分かれて引くのを、これが将軍(足利尊氏)であろう。どこまでも追い詰めて討とうとして、五十余町追いかけて行きましたが、降参の者どもが馬から下りて、各々対面して色代([挨拶])したので、これに会尺しようと、所々に馬を控えて会尺したので、軍勢は皆逃げる敵を追って東西を隔てました。義興と義治はわずか三百余騎になりました。


続く


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by santalab | 2017-05-04 08:53 | 太平記 | Comments(0)

    

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