Santa Lab's Blog


2017年 05月 15日 ( 2 )



「太平記」笛吹峠軍の事(その3)

鎌倉には、義興よしおき義治よしはる七千余騎にて、著到ちやくたうを付くると聞こへ、武蔵には新田義宗よしむね・上杉民部の大輔、二万余騎にて控へたりと聞こゆ。いづくへ可向と評定ありけるが、先づ勢のらうせぬさきに、大敵に打ち勝ちなば、鎌倉の小勢は不戦共可退散、衆議一途いちづに定まりて、将軍同じき二月二十五日石浜を立つて、武蔵の府に著き給へば、甲斐かひの源氏・武田の陸奥のかみ・同じき刑部ぎやうぶの大輔・子息修理しゆりすけ・武田の上野かうづけかみ・同じき甲斐の前司・同じき安芸の守・同じき弾正だんじやう少弼せうひつ・舎弟薩摩の守・小笠原近江あふみの守・同じき三河みかはの守・舎弟越後ゑちごの守・一条四郎・板垣四郎・逸見へんみ入道・同じき美濃の守・舎弟下野しもつけの守・南部常陸の守・下山十郎左衛門、都合二千余騎にて馳せ参る。




鎌倉では、義興(新田義興。新田義貞の次男)・義治(脇屋義治。新田義貞の弟、脇屋義助よしすけの子)が七千余騎で、著到([中世武家社会で,変事や戦闘にさいし、軍勢催促に応じて馳せ集まる軍勢到着。参陣した武士は著到状を提出し、著到帳に自己の姓名を登載してもらい、著到状に証判を加えて返付してもらう])を付けていると聞こえ、武蔵には新田義宗(新田義貞の三男)・上杉民部大輔(上杉憲顕のりあき)が、二万余騎にて控えていると聞こえました。どこに向かうか評定があるましたが、まず勢が疲れぬ前に、大敵に打ち勝てば、鎌倉の小勢は戦わずとも退散するであろうと、衆議は一途に定まりました、将軍(足利尊氏)は同じ二月二十五日に石浜(現東京都福生市牛浜?)を立って、武蔵国府(現東京都府中市)に着くと、甲斐源氏・武田陸奥守(武田信武のぶたけ)・同じく刑部大輔(武田氏信うぢのぶ。武田信武の次男)・子息修理亮・武田上野守・同じく甲斐前司(武田信成のぶなり)・同じく安芸守(武田氏信うぢのぶ。武田信成の弟。安芸守護)・同じく弾正少弼・舎弟薩摩守・小笠原近江守・同じく三河守・舎弟越後守・一条四郎・板垣四郎・逸見入道・同じく美濃守・舎弟下野守・南部常陸守・下山十郎左衛門が、都合二千余騎で馳せ参りました。


続く


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by santalab | 2017-05-15 08:07 | 太平記 | Comments(0)


「太平記」北山殿謀反の事(その18)

その後この楽なほ止まずして、陳の代に至る。陳の後主これをもてあそんで、ずゐの為に被滅ぬ。隋の煬帝やうたいまたこれを翫ぶ事甚だしくしてたう太宗たいそうに被滅ぬ。唐のすゑの代に当たつて、我がてうの楽人掃部頭かもんのかみ貞敏さだとし遣唐使けんたうしにて渡りたりしが、大唐だいたう琵琶びはの博士廉承夫れんせふふに逢うて、この曲を我が朝に伝来せり。然れどもこの曲に不吉のありとて、一手を略せる所あり。然るをその夜の御法楽ほふらくに、宗とこの手を引き給ひしに、しかも殊に殺発さつばつの聞こへつるこそ、浅ましく思へはんべりけれ、八音はちいんと与政通ずといへり。大納言殿の御身に当たつて、いかなるわづらひか出で来らん」と、孝重たかしげ歎きてまうしけるが、無幾程して、大納言殿この死刑に逢ひ給ふ。不思議なりける前相ぜんさうなり。




その後この楽はなおも消えることなく、陳の時代に至った。陳の後主(南朝陳の第五代、最後の皇帝)はこれを好んで、隋(隋の初代皇帝、文帝)に滅ぼされた。隋の煬帝(隋の第二代皇帝)もまたこれをたいそう好んで唐の太宗(唐の第二代皇帝)に滅ぼされた。唐の末代に当たって、我が朝の楽人掃部頭貞敏(藤原貞敏)が、遣唐使として渡ったが、大唐の琵琶博士廉承武と出会って、この曲を我が朝に持ち帰ったのだ。けれどもこの曲に不吉の声があると、一手を略した所がある。けれどもの夜の法楽([経を読誦したり、楽を奏し舞をまったりして神仏を楽しませること。また、和歌・芸能などを神仏に奉納すること])に、主にこの曲を弾いたが、なんとも言えぬ殺伐した音が聞こえたので、どうしたことかと不安に思ったものだ。八音([特に儒教音楽で使われる、八種類の楽器を表す語])は政に通じるというぞ。大納言殿(西園寺公宗きんむね)の身に、どのような心配事が起きるであろうか」と、孝重(藤原孝重)は嘆き申しましたが、ほどなくして、大納言殿は死刑となりました。不思議な前相([前兆])でした。


続く


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by santalab | 2017-05-15 08:00 | 太平記 | Comments(0)

    

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