Santa Lab's Blog


カテゴリ:竹取物語( 67 )



「竹取物語」(その25)

世の人々、「阿部の大臣、火鼠ひねずみ皮衣かはぎぬ持ていまして、かぐや姫に住み給ふとな。ここにやいます」など問ふ。ある人のいはく、「皮は火にくべて焼きたりしかば、めらめらと焼けにしかば、かぐや姫、ひ給はず」と言ひければ、これを聞きてぞ、遂げなきものをば、「あへなし」と言ひける。




世の人々は、「阿部の大臣は、『火鼠の皮衣』を持って参り、かぐや姫に求婚したそうですが、どうして今もここにいるのでしょう」と訊ねました。ある人が、「『火鼠の皮衣』を火に焼べると、めらめらと燃えてしまったので、かぐや姫は結婚しなかったのです」と答えました、これを聞いて、成し遂げることができないことを、「がっかりだね(『あへなし』)=『阿部無し』」と言いました。


続く


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by santalab | 2014-07-02 00:13 | 竹取物語 | Comments(0)


竹取物語

竹取物語


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by santalab | 2014-05-18 10:00 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その66)

大臣、上達部かんだちべを召して、「いづれの山か天に近き」と問はせ給ふに、ある人奏す、「駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近く侍る」と奏す。これを聞かせ給ひて、

逢ふことも 涙に浮かぶ わが身には 死なぬ薬も 何にかはせむ

かの奉る不死の薬に、また壺具して、御使みつかひに賜はす。勅使には、調石笠つきのいはかさと云ふ人を召して、駿河の国にあなる山のいただきに持てつくべき由、仰せ給ふ。不死の薬の壺並べて、火をつけて燃やすべき由、仰せ給ふ。この由承りて、つはものども数多あまた具して山へ登りけるよりなむ、その山を「富士の山」とは名付けける。その煙、いまだ雲の中へ立ち昇るとぞ、言ひ伝へたる。




帝は、大臣、上達部(太政大臣、左大臣、右大臣を含むがここでは、大納言、中納言、参議を指すのであろう)を呼び寄せて、「どの山が天に近いのじゃ」と訊ねられました、ある者が申し上げるには、「駿河の国(静岡県あたり)にあるという山でございますが、この都も近くに見え、天にも近いそうでございます」と奏上しました。帝はこれを聞いて、

かぐや姫に再び逢うことも叶わず、涙を浮かべているわたしには、不死の薬は何の使い道もあらぬ。
かぐや姫から贈られた不死の薬を、また壺に戻して、使いの者に持たせました。勅使に、調石笠という人を任命して、駿河の国にあるという山の山頂に持って参るようにと、命じました。山頂に不死の薬の壺を並べて、火をつけて燃やすようにと、言いつけました。調石笠はこの命を受けて、武人たちをたくさん連れだって山に登ってからは、その山を「富士の山」(富む士の山)と名付けられました。富士の山で燃やした薬の煙が、今となっても雲の中へ立ち昇っていると、言い伝えられているのです。


(終)


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by santalab | 2014-05-18 09:57 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その65)

その後、おきなおうな、血の涙を流して惑へど、甲斐なし。あの書き置きし文を読みて聞かせけれど、「何せむにか、命も惜しからむ。誰がためにか。何事も用もなし」とて、薬も食はず、やがて起きも上がらで、病み臥せり。


中将、人を引き具して帰り参りて、かぐや姫をえ戦ひとめずなりぬる、細々と奏す。薬の壺に御文添へて参らす。拡げて御覧じて、いとあはれがらせ給ひて、物も聞こし召さず、御遊びなどもなかりけり。




かぐや姫が月に帰ってしまった後、おじいさんとおばあさんは、血の涙(悲しさあまると流すという涙)を流して心を乱していましたが、どうすることもできませんでした。かぐや姫が書き残した文を読んで聞かせましたが、「いったい何のための不死の薬だというのじゃ、かぐや姫がいなくなった今となっては、わしは命だって惜しくはない。いったい誰のために残していったのか。わしにはまったく無用のものじゃ」と言って、不死の薬も飲まず、やがて起き上がることもできなくなって、病み臥せてしまいました。


一方中将は、かぐや姫の家に遣わした家来たちを連れて帝の許へ帰りました。月の者たちと戦ってかぐや姫を引き留めることができなかったことを、詳しく帝に奏上しました。不死の薬の壺にかぐや姫の文を添えて帝に差し上げました。帝はかぐや姫の文をお読みになられて、かぐや姫をとても不憫に思われて、食事もほとんど召しあがることもなく、お遊びになることもありませんでした。


続く
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by santalab | 2014-05-18 09:45 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その64)

かく数多あまたの人を賜ひて留めさせ給へど、許さぬ迎へまうで来て、取りて罷りぬれば、口惜しく悲しきこと。宮仕へ仕うまつらずなりぬるも、かくわづらはしき身にて侍れば、心得ずおぼし召されつらめども、心強く承らずなりにしこと。なめげなる者に思しめし留められぬるなむ、心に留まり侍りぬ。

とて、今はとて天の羽衣着る折ぞ君をあはれと思ひ出でけるとて、壺の薬添へて、頭中将とうのちゆうじやう呼び寄せて奉らす。中将に、天人取りて伝ふ。中将取りつれば、ふと天の羽衣うち着せ奉りつれば、おきなをいとほし、かなしと思しつることも失せぬ。このきぬ着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。




帝がこんなに多くの人をお遣りになられてわたしが月に帰るのを止めようとなさいましたが、それを許さぬ迎えがやって来て、わたしを連れて帰ろうとしておりますれば、残念で悲しくて仕方ございません。宮仕えとして参ることもないままとなりましたのも、このような事情がございました故のこと、
ご理解いただけないかもしれませんが、強ちにお受けしなかったのでございます。帝がわたしのことを不誠実な者だと思われておられるなら、それが心残りでございます。

と文を書き終えました、今は天の羽衣を着る時となって帝の愛情をしみじみと思い出しながら、かぐや姫は文に壺の薬を添えて、近衛中将に、天人が取り次いで渡しました。中将が文と壺を受け取ると、すぐにかぐや姫は天の羽衣を着ました、おじいさんを気の毒に思い、心が痛み悲しむ気持ちは消え去ってしまいました。天の羽衣を着たかぐや姫は、物思いに沈むこともなく、車に乗って、百人ほどの天人を供にして、月へ昇って行きました。


続く
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by santalab | 2014-05-18 09:20 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その63)

天人あめひとの中に持たせたる箱あり。天の羽衣入れり。またあるは、不死の薬入れり。一人の天人言ふ。「壺なる御薬奉れ。きたなき所の物聞こしめしたれば、御心悪しからむものぞ」とて、持て寄りたれば、いささかめ給ひて、少し形見とて、脱ぎ置く衣に包まむとすれば、ある天人包ませず、御衣おんぞを取り出でて着せむとす。その時に、かぐや姫、「しばし待て」と言ふ。「衣着せつる人は、心ことになるなりと云ふ。物一言、言ひ置くべき事ありけり」と言ひて、文書く。天人、遅しと、心許ながり給ふ。かぐや姫、「物知らぬことなのたまひそ」とて、いみじく静かに、朝廷おほやけに御文奉り給ふ。あわてぬ様なり。




月の都の人の中には箱を持った者がいました。箱には天の羽衣(天人が着る衣で空を飛ぶことができる)が入っていました。また別の箱には、不死の薬が入っていました。一人の天人がかぐや姫に言うには、「壺ニ入ッテイル薬ヲ召シアガレ。ケガラワシイ所ダト噂ヲ聞キ及ンデオリマス、サゾ気分モ悪イコトデショウ」と言って、かぐや姫に不死の薬を持って近付けば、かぐや姫はほんの少しだけなめてから、少しを形見として、脱いだ着物に包もうとしましたが、ほかの天人が包ませませんでした、お召し物を箱から取り出して着せようとしました。その時、かぐや姫は、「しばらく待ってください」と言いました。「この頃もを着てしまったら、心も変わってしまうといいます。何か一言、言い残しておきたいことがあるのです」と言って、文を書きました。天人は、かぐや姫が急がないので、いらだっていました。かぐや姫は、「事情を知らないお方にご説明申し上げたいのです」と言って、たいそうもの静かに、帝に差し上げる文を書きました。かぐや姫は落ち着いた様子でした。


続く
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by santalab | 2014-05-18 08:57 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その62)

竹取、心惑ひて泣き伏せる所に寄りて、かぐや姫言ふ。「ここにも、心にもあらでかく罷るに、昇らむをだに見送り給へ」と言へども、「何しに、悲しきに、見送り奉らむ。我を、いかにせよとて、捨てては昇り給ふぞ。具してておはせね」と、泣きて伏せれば、御心惑ひぬ。「文を書き置きて罷らむ。恋しからむ折々、取り出でて見給へ」とて、うち泣きて書く言葉は、

この国に生まれぬとならば、嘆かせ奉らぬほどまで侍らで過ぎ別れぬこと、かへす返す本意なくこそ思え侍れ。脱ぎ置くきぬを形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見こせ給へ。見捨て奉りて罷る空よりも、落ちぬべき心地する。

と書き置く。




竹取のおじいさんは、うろたえて泣き伏せっているおばあさんの所へ寄ると、かぐや姫が言いました。「わたしもとても悲しくて、望むことではなく去っていかなければなりません、どうかわたしが月に昇っていくのを見送ってください」と言いいました、おじいさんは、「どうして、こんなに悲しいのに、かぐや姫を見送ることなどできよう。わしたちを、どんな訳があろうとも、ここに置いたまま月に昇らせはせぬぞ。かぐや姫と一緒に月へ連れて行っておくれ」と、泣いて頼むので、かぐや姫の心は揺れるのでした。かぐや姫は、「文を書いて置いていきます。わたしのことを恋しく思う度に、文を取り出して読んでください」と言って、泣きながら書く文章には、

この国に生まれぬこの身ですから、おじいさん、おばあさんを嘆き悲しませるほど長い間過ごした後に別れなければならないことが、悔みきれなくて、くれぐれも本心ではないということだけはわかってください。ここに着物を脱いで置いていきますから形見と思ってください。月が出る夜は、月を見上げてください。おじいさん、おばあさんを見捨てて帰る空から、落ちてしまえばよいのにと願っておじいさんとおばあさんを月から拝見することにいたします。

と書き置きました。


続く
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by santalab | 2014-05-17 21:39 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その61)

おきな、答へて申す。「かぐや姫を養ひ奉ること、二十余年になりぬ。『片時』とのたまふに、怪しくなり侍りぬ。また異所ことどころに、かぐや姫と申す人ぞおはしますらむ」と言ふ。「ここにおはするかぐや姫は、重き病ひをし給へば、え出でおはしますまじ」と申せば、その返事かへりことはなくて、屋の上に飛ぶ車を寄せて、「いざ、かぐや姫。きたなき所に、いかでか久しくおはせむ」と言ふ。立て籠めたる所の戸、すなはち、ただ開きに開きぬ。格子どもも、人はなくして開きぬ。おうな抱きて居たるかぐや姫、外に出でぬ。え留むまじければ、たださし仰ぎて泣きをり。




おじいさんが、答えて言うには、「かぐや姫を養って、もう二十年余りになろうか。お主は『わずかの間』と申したが、とんでもないことじゃ。どこか別の所にも、かぐや姫という人がおるんじゃなかろうかの」と言いました。「ここにおりますかぐや姫は、重い病いにかかっておるんじゃ、外に出すことはできぬ」と言えば、月の王からの返事はなくて、屋根の上に飛ぶ車を寄せて、「サア、カグヤ姫ヨ。ケガラワシイ所二、ナゼイツマデモイルノダ」と言いました。鍵をかけた納屋の戸は、たちまち容易く開いてしまいました。格子もすべて、勝手に開いてしまいました。おばあさんが抱いていたかぐや姫は、外に出ました。おばあさんはかぐや姫を引き留めることができなくて、ただかぐや姫を仰いで泣くばかりでした。


続く
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by santalab | 2014-05-17 21:26 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その60)

立てる人どもは、装束の清らなること、物にも似ず。飛ぶ車一つ具したり。羅蓋らがい差したり。その中に王と思しき人、家に、「造麻呂みやつまろまう」と言ふに、たけく思ひつる造麻呂も、物にひたる心地して、うつ伏しに伏せり。いはく、「汝、幼き人。いささかなる功徳を、おきな作りけるによりて、汝が助けにとて、片時のほどとて下ししを、そこらの年来、そこらの黄金こがね賜ひて、身を変へたるがごとなりにたり。かぐや姫は、罪を作り給へりければ、かく賤しきおのれが許に、しばしおはしつるなり。罪の限り果てぬれば、かく迎ふる」、翁は泣き嘆く。「あたはぬことなり。早や返し奉れ」と言ふ。




一方、雲の上に立っている月の人たちの、装束はとても美しく、例えるものがないほどでした。空を飛ぶ車を一つ引いていました。月の人たちは絹傘をさしていました。その中に王と思われる人が、かぐや姫の家に向かって、「造麻呂ヨ、出テコイ」と言うと、「戦う気に満ち溢れていた造麻呂も、何かに酔ったような気になって、体を屈めて平伏しました。月の王が言うには、「造麻呂、幼キ者ヨ。ワズカノ善行ノ褒美トシテ、オ前ヲ助ケルタメ、ワズカナ間カグヤ姫ヲオ前ノモトヘ下シタガ、長年ニワタリ、オ前ハ多クノ黄金ヲ手ニ入レテ、身分モスッカリ変ワツタ。カグヤ姫は、月ノ都デ罪ヲ犯シテ、下賤ノオ前ノモトニ、シバラク遣シタ。シカシ罰モ終ワリダ、コウシテカグヤ姫ヲ迎エニ来タゾ」と言うと、おじいさんは泣き嘆きました。月の王は、「オ前ガイクラ嘆イテモ無駄ナコトダ。カグヤ姫ヲスグニ返セ」と言いました。


続く
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by santalab | 2014-05-17 21:10 | 竹取物語 | Comments(0)


「竹取物語」(その59)

かかるほどに、宵うち過ぎて、子の時ばかりに、家のあたり、昼の明かさにも過ぎて光りたり。望月の明かさを十合わせたるばかりにて、ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。大空より、人、雲に乗りて降り来て、土より五尺ばかり上がりたるほどに、立ち列ねたり。内外うちとなる人の心ども、物におそはるるやうにて、合ひ戦はむ心もなかりけり。からうして思ひ起して、弓矢を取り立てむとすれども、手に力もなくなりて、萎えかかりたる中に、心さかしき者、念じて射むとすれども、外様へ行きければ、荒れも戦はで、心地ただ痴れに痴れて、守り合へり。




そうこうしているうちに、宵の口もはや過ぎて、子の刻(午後十一時から翌午前一時あたり)になった頃、かぐや姫の家のあたりが、昼の明るさにも増して明るくなりました。満月の明るさの十倍ほどで、人の毛の穴さえも見えるようでした。天空より、月の人が、雲に乗って降りて来て、地面より五尺(約1.5m)ほどの上がったところに、立ち並んでいました。かぐや姫を守る内外にいる家来たちは、何かに襲われたような気になって、戦う気持ちが失せてしまいました。それでもなんとか気を奮い立たせて、弓矢を射ようとしても、手に力も入りません、体力も弱ってしまいました。中には気力を振り絞って、なんとか耐えて矢を射る者もいましたが、見当外れなところへ飛んで行くので、闘志も戦う気力も失って、ただ呆けるように正気を失ったまま、月の人を見守るばかりでした。


続く
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by santalab | 2014-05-17 20:54 | 竹取物語 | Comments(0)

    

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