Santa Lab's Blog


カテゴリ:宇津保物語( 181 )



「宇津保物語」藤原の君(その95)

中納言殿より、

沈みなむ 身をば思はず 名取川 踏み見てしかな 淵瀬知るべく

貴宮、
滝つ瀬に 浮かべつ泡の いかでかは 淵瀬に沈む 身とは知るべき




中納言殿(平中納言)より、

あなたに相手にされなくて、思いに沈んでいると、人に言われるまでになってしまいました(名取川=宮城県中南部を東流する川)。すでに知られてしまったのであれば、その淵瀬を知りたくて川に入ってみたいわたしです。

貴宮の返事には、
あなたは、滝鳴る瀬に、自ら身を浮かべるようなお人ではありませんか(軽い人?)。決して淵瀬に沈むことを、望むような人ではありません。


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by santalab | 2015-04-15 11:43 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その94)

右大将殿より、

侘び人の 涙を拾ふ ものならば 袂や玉の 箱とならまし

貴宮、
涙をも 箱なる玉と 見ましかば よそなる人を 拾ひ添へまし




右大将殿(藤原兼雅かねまさ)より、

あなたがわたしの涙を拾ってくれたなら、あなたの袂は玉の箱([美しい箱])となることでしょう。

貴宮は、
わたしがあなたの涙を箱の玉と思うならば、ほかの人も、拾おうと思うのではありませんか。


続く


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by santalab | 2015-04-15 11:32 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その93)

例の宰相、

旅寝する 身には涙も なからなむ 常に浮きたる 心地のみする

貴宮、
たびごとに 空に立ち居る 塵なれや 露ばかりにも 浮かぶなるかな




例の宰相(源実忠さねただ)は、

旅先で寝る、我が身には涙さえも、ありません。ただいつも落ち着かないような、気がするばかりです。

貴宮の返事には、
気が落ち着かないのでしたら、ご自分を空に立ち上る、塵とでもお思いになればよろしいのでは、露ほどの涙も、浮かぶかもしれませんよ。


続く


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by santalab | 2015-04-15 11:23 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その92)

かくて、帰り給ひぬ。


晦日つごもりばかりになりぬ。春宮より、貴宮の御許に、かく聞こえ給へり。

「初秋の 色をこそ見め 女郎花 露の宿りと 聞くが苦しき

聞くことの様々なるこそ、甲斐かひなけれ」と聞こえ給へり。貴宮、
秋の色も 露をもいさや 女郎花 木隠れにのみ 咲くとこそ見れ




こうして、左大将(源正頼まさより)の宮たちは帰って行きました。


七月も末になりました。春宮より、貴宮の許に、文が届きました。

「あなたの初秋の色を見てみたいと思っています。それはともかく女郎花をみなへし(美人のたとえ)よ、入内することを、あなたが悲しんでいると聞いてつらく思っています。本当ですか。

様々なことを聞くので、まったく確かなことは分かりませんが」とありました。貴宮は、
秋が色付いたとか、悲しんでいるとか噂を聞くようでございますがさあどうでしょうか。女郎花は木隠れ([重なりあった木の枝葉の陰に隠れてはっきりと見えないこと])に、咲くと言いますから本当のところは分からないものでございますわ。


続く


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by santalab | 2015-04-11 10:08 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その91)

ここは、河原に、御髪みぐしましたり。
貴宮きんの御琴、今宮さうの御琴、御息所琵琶びは、大宮大和琴調べ給へり。春宮の御使ひに、物かづけたり。
ここに、人々、貴宮の御琴遊ばす聞くとて、河ほとりに居給へり。君達の御使ひに、遊女うかれめ二十人ばかり、琴弾き、歌歌ひて、御衣おんぞ賜はれり。




ここは、賀茂の河原です。左大将(源正頼まさより)の宮たちは髪を洗ぎ終わりました。
貴宮が琴の琴(琴)、今宮(朱雀帝の娘一の宮)は筝の琴(筝)、御息所(左大将の娘、大君)は琵琶、大宮(左大将の妻、嵯峨院の娘一の宮)は大和琴(和琴)を弾いています。春宮(大君の子)の使いに、贈り物をしています。
ここに、者たちが、貴宮が琴を弾くのを聞こうと、賀茂川のほとりにすわっています。君達(左大将の子)の使い、遊女([芸者])が二十人ばかり、琴を弾き、歌を歌って、衣を賜っています。


続く


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by santalab | 2015-04-11 10:01 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その90)

行正ゆきまさ

我が恋は 織女に 劣らねど 会ふをいつと 知らずもあるかな

など聞こえ給へり。御返りなし。




行正(良岑行正)からは、

わたしがあなたを想う気持ちは、織女たなばたつめ(織姫)に決して負けませんが、あなたにいつ逢えるのか、まったく知れません。

と文がありました。貴宮からの返事はありませんでした。


続く


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by santalab | 2015-04-04 08:55 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その89)

三の宮、

七夕の 夫待つ宵の 露にだに 濡れみてしかな 恋は覚むやと




三の宮(朱雀帝の皇子)は、

織姫が、彦星を待つ夜の露にでも、濡れてみましょう、あなたへの恋が醒めるかもしれませんから。


続く


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by santalab | 2015-04-04 08:49 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その88)

貴宮、

七夕の 会ふ夜の露を 秋ごとに 我がかす糸の 玉と見るかな

など、これかれ御琴遊ばしなどするを、宰相、河ほとりに眺め暮らして、貴宮に、かく聞こえ給へり。
雨と降る 涙はいつも 分かぬども 今日のあはとを くりくらすかな




貴宮は、

織姫と彦星が逢う七夕の夜には、毎秋露を差し上げましょう。わたしが貸す綛糸かすいと([かせ=紡いだ糸を巻き取る道具。から外して束にした糸])の玉と思うかしら。

などと歌を詠み、誰かれも琴を弾いたりしていましたが、宰相(源実忠さねただ)は、賀茂川のほとりで天を眺めながら、貴宮に、歌を贈りました。
雨のように流れる、涙はいつのもと変わりません。ただただ今日の七夕の逢瀬のようにあなたと逢える日を思って、織姫が機を織り続けるように泣き続けるばかりです。


続く


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by santalab | 2015-04-04 08:39 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その87)

今宮、

七夕の 会ふと聞くを 天の川 浮かべる星の 名にこそありけれ




今宮(朱雀帝の娘一の宮)は、

七夕の日に、逢うと聞く天の川に輝くのは、その名にまさる美しい星ですね。


続く


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by santalab | 2015-03-31 12:37 | 宇津保物語 | Comments(0)


「宇津保物語」藤原の君(その86)

中将殿の御方、

七夕の まれに会ふ夜の しののめは 見る人さへも 惜しくもあるかな




中将殿(源実頼さねより)の御方(左大将藤原正頼まさよりの四女)、

七夕に、年に一度会う夜の、しののめ([東雲]=[明け方])は、見る者さえ、忍びなく思うものです。


続く


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by santalab | 2015-03-31 08:50 | 宇津保物語 | Comments(0)

    

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