Santa Lab's Blog


「平家物語」千手前(その1)

去るほどに兵衛ひやうゑすけ殿、三位中将殿に対面あつてまうされけるは、「そもそも頼朝、君の御いきどほりを休め奉り、父のはぢを清めんと思ひ立ちしうへは、平家を滅ぼさんこと、あんの内に存ぜしかども、正しうかやうに御目にかかるべしとは、掛けては存じさふらはず。このぢやうでは、屋島の大臣殿の見参げんざんにも入りぬべしと思え候ふ。さても南都炎上えんしやうのことは、故入道にふだう相国しやうこくの御成敗にて候ひけるか、また時にとつての御ぱからひか、もつてのほかの罪業ざいごふでこそ候ふめれ」と申されければ、三位中将のたまひけるは、「先づ南都炎上のことは、故入道相国の成敗にもあらず、また重衡しげひらがわたくしの発起にても候はず。衆徒しゆと悪行あくぎやうしづめんがために、罷り向かつて候ひしほどに、不慮に伽藍の滅亡に及び候ひぬることは、力及ばざる次第なり。




やがて兵衛佐殿(源頼朝)は、三位中将殿(平重衡しげひら。清盛の五男)と対面して言うには、「そもそもわたしは、君(後白河院)の憤りを休め、父(源義朝よしとも。平治の乱で討たれた)の恥を晴らそうと思い立った上は、平家を滅ぼすことは、暗に心に思っていたことではありましたが、こうして現にお目にかかるとは、まったく思いもしなかったことです。この様子では、屋島大臣殿(平宗盛むねもり。清盛の三男)にも会うことがあろうと思います。さて南都炎上のことですが、故入道相国(平清盛。重衡の父)の決めたことですか、それとも偶然起こったことでしょうか、どちらにせよもってのほかの罪業([罪となる悪い行い])には違いありませんが」と申すと、重衡が言うには、「南都炎上は、父が決めたことではありません、またわたしが考えたことでもありません。宗徒([僧])の悪行を鎮めるために、攻めましたが、思いがけず伽藍([大寺・寺院])の滅亡に及んだことは、仕方のないことでした。


続く


by santalab | 2013-08-15 07:08 | 平家物語

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