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「落窪物語」巻四(その31)

北の方「かうかうのことなむ、かの大臣殿ののたまふなるを、をこに人の思ほしたりし御身を、いともよきこととなむ、うれしく思ふを、いかが思す」とのたまへば、四の君、面赤めて、「いとよきことに侍るなれど、かかる身を知らぬ様にや。なでふ然ることか侍るべき。人の思せむも、且つは、かの殿の御恥ならむ。いと見苦しからむ。心憂き身なれば、尼になりなむと思へど、おはせむ限りは、例の片身に見え奉るをだに、仕うまつるに思う給へてなむ、今までだに侍る」とて泣き給ひぬれば、思ひ知り給へりけりと、あはれに、うち涙ぐみてたり。北の方「あな禍々まがまがし。なでふ尼にかなり給ふべき。しばしにても、なほ華やかなる目見給はむぞ、人も、『かくありけり』と思ふべき。おのが言に従ひ給ふと思ひて、この事し給へ」とのたまふ。少将「御返りは、いかが申さむ」と言へば、「この君は、かくなむのたまへど、ここになむ、いとうれしきことと。ただ、ともかくも御心して思さむ方にしなし給へ」とのたまへば、「を」とて立ちぬ。




北の方が四の君に「あなたに夫を世話したいと、左大臣殿が申しております、愚か者だと人に思われたあなたにとって、とてもよい話だと、うれしく思っているのよ、どうでしょう」と申すと、四の君は、顔を赤らめて、「とてもよいお話ですが、恥知らずと思われませんか。どうして結婚などできましょう。相手の方がそのように思われることでさえ、きっと、左大臣殿の恥になりましょう。そのことがとてもつらいのです。情けなく思うこの身です、尼にでもなろうと思っていますが、母上がおられる限りは、今まで通りお近くにいたいと思って、お仕えしようと思って、尼にならずにいるのです」と言って泣きました、少将(故大納言の三男)は哀れな身の上を嘆いていたのだと思って、気の毒になって、涙ぐんでいました。北の方は「ばかなことを言うものではありません。どうして尼にならなければならないの。しばらく、華やかな暮らしをすれば、相手の方も、『よかった』と思うでしょう。わたしが言う通り、結婚しなさい」と申しました。少将が「返事は、どうしましょう」と言うと、北の方は「四の君は、尼になりたいとか言っていますが、わたしの言う通り、とてもうれしいことと申してください。後は、あなたに任せます」と申すと、少将は「分かりました」と言って出て行きました。


続く


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by santalab | 2013-08-20 07:33 | 落窪物語 | Comments(0)

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