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「落窪物語」巻四(その32)

殿に参りて、しかじかなむ、ありつることを申し給へば、北の方、四の君、のいたまひけることを、あはれがりて、「さも思すべきことなれど、世にある人は、かかるたぐひ多かなり、と思しなすべく」とのたまふ。殿、聞き給ひて、「北の方だに、さのたまはば、正身せうじみ、ものしと思すとも、ただしてむ。いとよき人なり。この月、晦日つごもりに下るべし。『同じくはく』とのたまひき。や四の君、ここに渡し給へ」と少将にのたまへば、暦取りに遣りて見給ふに、この七日いとよかりけり。何事にかさはらむ、人々の装束は、ここにし置かれたらむ設けの物して、西の対にてせむ、と思ほして、西の対しつらはれ給ふ。「四の君、早や渡り給へ」と聞こえ給へば、「早や早や」と急がし給へど、本意なきことなれば、いとうたて物憂く思えて、「今、今」と言ひて、さらに思ひも立たねば、「このことならずとも、『渡り給へ』と、あはれもあらむは、会はすまじくやあらむ。あな僻々ひがひがし」と言ひて、渡し奉りつ。




少将(故大納言の三男)が左大臣殿に戻って、これこれですと、あったことを話すと、北の方(落窪の君)は、四の君が、言ったことを、気の毒に思って、「そう思うことは当然のことですが、世にある者には、そのようなことも多くある、と思ってくれれば」と言いました。左大臣殿も、話を聞いて、「北の方が、そう申すのならば、四の君自身が、そう思おうとも、結婚させよう。とてもいい者だ。今月、末に大宰府に下ることになっておる。『結婚するなら早いうちに』と申しておったな。すぐに四の君を、ここへ連れて来るように」と少将に申したので、少将は暦を持ってこさせて見ると、七日が吉日でした。左大臣殿は今なら間に合うし、人々の装束は、この殿にあるものを使い、西の対屋([離れ])で結婚させよう、と思って、西の対屋に結婚の準備をさせました。左大臣殿の北の方(落窪の君)も「四の君を、早く左大臣殿へお連れして」と少将に言ったので、少将は四の君に「早く早く」と急がせましたが、四の君の望むところではありませんでしたので、つらく悲しくて、「今すぐ、参ります」と言ったきり、立とうともしないので、北の方も「結婚はさておき、左大臣殿が『おいでください』と、親切に申しているのです、参らないわけにはいきませんよ。意地を張るのはやめなさい」と申して、四の君を殿から出しました。


続く


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by santalab | 2013-08-21 07:24 | 落窪物語 | Comments(0)

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