Santa Lab's Blog


「平家物語」横笛(その4)

その後滝口入道、同宿どうしゆくの僧に語りけるは、これもよにしづかにて、念仏の障礙しやうげさふらはねども、飽かで別れし女に、この住まひを見えてさふらへば、たとひ一度は心強くとも、またも慕ふことあらば、心も働き候ひなんず。いとま申す」とて、嵯峨をば出でて高野かうやへ上り、清浄しやうじやう心院しんゐんに行ひすましてぞたりける。横笛もやがて様を変へぬる由聞こえしかば、滝口入道、いつしゆの歌をぞ贈りける。

反るまでは 恨みしかども 梓弓 真の道に 入るぞうれしき

横笛が返事に、
反るとても なにか恨みむ 梓弓 ひきとどむべき 心ならねば




その後滝口入道が、同宿の僧に語るには、ここも静かな所で、念仏の妨げになることはありませんが、嫌いになって別れたわけでもない女が、この住まいを訪ねてきたので、たとえ一度はつれなくしても、また恋しく思うことがあれば、精神も統一できません。お別れしたく思います」と言って、嵯峨(今の京都市右京区)を出て高野(高野山。今の和歌山県伊都郡にあります)に上り、清浄心院(高野山にある寺院)で修行に励みました。横笛もやがて仏門に入ったと聞いたので、滝口入道は、一首の歌を贈りました。

梓弓ではないですが反る(髪を剃って仏門に入る)までは、さんざんわたしのことを恨みもしたことでしょう。あなたが恨みを忘れ、真の道([仏道])に入ったと聞いて、ありがたく思っています。

横笛の返事は、
梓弓が反ったからといって何を恨むことがありましょうか。わたしが髪を剃って仏門に入ったのは、あなたを引きとめることができなかったのはこのわたしだからなのです。


続く


by santalab | 2013-08-31 08:18 | 平家物語

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