Santa Lab's Blog


「落窪物語」巻四(その44)

女君も同じ所におはす。「いかで物聞こえさせむ」と言へば、そち、「ここにて聞こえ給はむに」と、「敢へぬべきことならば、く入りて聞こえ給へ」と言へば、少将入りて、「しかじかなむ」と言へば、女君「げに、いかで対面せむ。ここにも、いと恋しくなむ思え給へば、いかで参り来むとなむ、昨日聞こえたりし」とのたまふ。そち「かしこへ渡り給はむ、ニ所通ひせむほどに、物しく、おのがためになむ悪しかるべきを、かたじけなくとも、ここに渡らせ給へかし。人待らばこそ慎ましくも思さめ、幼き人ばかりなむ。それを、便びんなかるべくは、離れたる方に置き侍りなむ。京に物し給ふべきほどは、げに今日、明日ばかりなり。対面なくては、いかでかは」とのたまへば、定めしもるく、「そのことをなむ、かしこにも、いといみじく嘆かるめる」と言へば、帥「やよろしう定めて、こなたに渡し奉り給へ。そち参り給はむことは、なほ悪しくなむある」と言へば、少将「さらば、かくなむ物し侍らむ」とて立てば、四の君「必ず必ず、よくそそのかし給へ」とのたまへば、「承りぬ」とて出でぬ。




少将(故大納言の三男)が帥殿を訪ねると四の君も同じ部屋にいました。帥殿に「申し上げたいことがございます」と言うと、帥殿(四の君の夫)は、「ここで聞こう」と答えて、「急ぎ申すことならば、すぐにここへ来て話せ」と言いました、少将は部屋に入って、「しかじかでございます」と言うと、四の君も「本当ですか、なんとしても母上に会いたい。わたしも、母上をとても恋しく思って、どうしても母上を訪ねたいと、昨日申したのです」と言いました。帥殿は「こちらから訪ねれば、二人で訪ねなくてはならず、煩わしくて、わたしにとって不都合なこと、かたじけないことだが、こちらに来てはもらえないか。ほかに人がいるのなら嫌だろうが、幼い子どもたちばかりだ。それでも、都合悪ければ、子どもたちを離れた所に置こう。京にいられるのは、今日、明日ばかり。母上に会わずに、大宰府には下れない」と申したので、落窪の君が話した通りに、「母もそのことを、あちらで、とても嘆いておりましょう」と言うと、帥は「早くよく計らって、こちらを訪ねていただきたい。わたしが母上の許を訪ねるのは、よろしくないでしょう」と申しました、少将は「分かりました、母に伝えましょう」と言って立ち去ろうとしたので、四の君は、「必ず必ず、母上にうまく伝えてください」と言うと、少将は「分かりました」と言って出て行きました。


続く


by santalab | 2013-09-03 07:43 | 落窪物語

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