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「落窪物語」巻四(その59)

聞こゆるからに、人わろし。よしよし、聞こえじ」と書きたり。面白の駒の手なれば、覚えなく、浅まし。「誰かし出づらむ」と、北の方も見て驚きぬ。怪しがる。四の君、あはれに言ひ契りなども、例の人のやうにも、せざりしかば、思ひ出づることはなけれど、これを見るにぞ、さすがに思ひ出でらるる。少将は、「これを左の大臣おとどの姫君に奉り給へ」と言へば、母北の方「をかしき物にこそあめれ。なほ、持らまへれ」と言ふめれど、四の君も、なほよろづにし給ふめるものを、と思ひて、「よかなり」と言ふ。少将も、「なほなほ」と言ひて、「我奉らむ」とて取りて奉る。面白の駒は思ひも寄らざりけれど、妹どもの心ありければ、子などあればと思ひて、ただにやはとて、したるなりけり。




こう書いただけでも、あなたはわたしを悪く思われることでしょう。ならば、他には何も申しません」と書いてありました。面白の駒の筆跡でしたので、四の君は今までにないほど、びっくりしました。「いったい誰がこのようなことを」と、四の君の北の方も文を見て驚きました。そして怪しみました。四の君は、面白の駒とは心から契らず、普通の人のように、想う気持ちもなかったので、面白の駒を思い出すことはまったくありませんでしたが、文を見て、さすがに思い出さずにはいられませんでした。少将(故大納言の三男)は、「これを左大臣殿の姫君に差し上げよう」と言うと、母である北の方は「とてもいい物じゃありませんか。ずっと、あなたが持ってなさい」と言いましたが、四の君も、すべて左大臣殿のおかげです、と思って、少将に「左大臣殿に差し上げてください」と答えました。少将も、「それはよいことです」といって、「わたしがお持ちします」と言って取って行きました。皆面白の駒のことは考えもしませんでしたが、妹を思う気持ちもあり、二人の間には子もあることと思って、よいことと、落窪の君が気をきかせたのでした。


続く


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by santalab | 2013-09-18 06:39 | 落窪物語 | Comments(0)

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