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「平家物語」奈良炎上(その4)

夜戦よいくさになつて、大将軍たいしやうぐんとう中将ちうじやう重衡しげひら、般若寺の門のまへにうつ立つて、暗さは暗し、「火を出だせ」とのたまへば、播磨の国の住人ぢうにん福井ふくゐしやう下司げし次郎じらう大夫たいふ友方ともかたと言ふ者、楯を割り松明たいまつにして、在家に火をぞかけたりける。頃は十二月じふにんぐわつ二十八日の夜の、いぬの刻ばかりのことなれば、折節をりふし風は激し、火元ほもとは一つなりけれども、吹き迷ふ風に、おほくの伽藍に吹きかけたり。およそはぢをも思ひ、名をもしむほどの者は、奈良阪にて討ち死にし、般若寺にして討たれにけり。




夜戦になって、大将軍である頭中将重衡(平重衡。清盛の五男)は、般若寺(奈良県奈良市にある寺)の門の前に立って、あたりはすっかり暗く、「火を点けよ」と言うと、播磨国の住人である、福井庄(今の兵庫県姫路市南西部あたりらしい)の下司([身分の低い役人])、次郎大夫友方と言うものが、楯を割り松明にして、在家に火をつけました。頃は十二月二十八日の夜の、戌の刻([午後八時頃])のことでしたので、風は激しく、火元は一つでしたが、吹きまくる風によって、多くの伽藍([大寺院])に火を吹きかけました。負け戦の恥を思い、名誉を惜しむほどの者たちは、皆奈良阪([奈良市の北から京都府木津川市木津に出る坂道])で討ち死に、もしくは般若寺(奈良市般若寺町にある寺院)で討たれました。


続く


by santalab | 2013-11-12 07:06 | 平家物語

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