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「平家物語」大原御幸(その7)

さてかたはらを叡覧あるに、御寝所ぎよしんじよと思しくて、竹の御竿さをに、あさの御衣、紙のふすまなんど掛けられたり。さしも本朝ほんてう漢土かんどたへなるたぐひ数を尽くし、繚乱りようら錦繍きんしうよそほひも、さながら夢にぞなりにける。法皇ほふわう御涙を流させ給へば、供奉ぐぶくぎやう殿上人も、まのあたり見奉りしことども、今のやうに思えて、皆袖をぞ絞られける。ややあつてうへの山より、濃き墨染めの衣着たりける尼二人ににんいはの懸けを伝ひつつ、下りわづらひたる様なりける。




後白河院があたりを見渡すと、建礼門院の寝所と思われる、竹の竿に、麻衣([麻布で作った粗末な着物])、紙で作った粗末な衾([掛け布団])などが掛けてありました。それはまるで本朝([我が国])漢土([中国])の美しい品々を数を尽くし、繚乱錦繍([繚乱]=[入り乱れること]、[錦繍]=[美しい織物、衣服])で着飾ったことも、すべて夢になってしまったようでした。後白河院が涙を流すと、お供の公卿(三位以上)殿上人(三位以上と四位、五位のうち特に許された者、六位蔵人)も、目前に見るものが、建礼門院の今の姿と思えて、皆涙で濡れた袖を絞っていました。少したって上の山より、濃い墨染めの法衣を着た尼が二人、岩の険しい道をつたって、下るのに難儀している様子でした。


by santalab | 2013-11-21 14:51 | 平家物語

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