「二陣の手が進みければ、先陣・後陣如何でか控ふべき」とて馳せ行きけり。河端に馳せて見れば、敵、河端より少し引き上げて陣を取り、河岸に舟を伏せて逆茂木を引きたり。容易く渡るべき様なし。
武田信光は「二陣の手が進めば、先陣・後陣が待つこともない」と言って馳せ行きました。川端に急ぎ向かって見れば、敵(京方)は、川端より少し上った所に陣を取り、川岸に舟を伏せて逆茂木([敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵])を引いていました。容易く渡れるようには思えませんでした。
(続く)