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「水鏡」序(その5)

次に住劫ぢゆうごふまうして、また二十の中劫のほどを過ぐすなり。ただし初めの一劫は、命、次第に劣りのみして、優る事なし。されば住劫の初めの人の命は八万歳にはあらで、無量歳にて、それより十歳までなるなり。されどもほどの経る事は、一つの中劫のほどなり。さて第二の劫より十九の劫まで、先に申しつるやうに、八万歳より十歳になり、十歳より八万歳になり、劫ごとにかく侍るなり。さて第二十の劫は、十歳より八万歳まで、優る事のみありて、劣る事なし。これも過ぐるほどは一の中劫の間なり。これは天より地獄まで、成劫に出で来調ほりて、有情のあるほどなり。さて住劫とは申すなり。次に壊劫ゑかうと申して、このほどまた二十の中劫のほどなり。初めの十九劫には、地獄より初めて、有情皆失せぬ。この失すと申すは、いづこともなく失せぬるにはあらず。しかるべくして天上へ生まるるなり。ただし地獄の業なほ尽きぬ衆生をば、こと三千界の地獄へしばし移し遣るなり。かくて第二十の劫に、水出で来て、しも風輪とて、風吹き張りたる所の上より梵天まで、山河も何もかもなく焼け失せぬ。かく破れぬれば、壊劫とは申すなり。




次に住劫([四劫しかうの第二。人類が世界に安住する時期])と申して、また二十の中劫のほどを過ごすのじゃ。ただし初めの一劫は、人の命は、次第に減るばかりで、増えることはない。そして住劫の初めの人の命は八万歳ではなく、無量歳で、そこから十歳までなるのじゃ。けれどもその間は、一中劫じゃ。さて第二の劫より十九の劫まで、先に申したように、八万歳より十歳になり、十歳より八万歳になり、劫ごとに繰り返すのじゃ。そして第二十の劫は、十歳より八万歳まで、増えるばかりで、減ることはない。これもその間は一中劫じゃ。これは天より地獄まで、成劫に出で来たものが揃って、有情([人間])もまた世に住む期間ぞ。それで住劫とは申すのじゃ。次に壊劫([四劫の第三。世界が破滅する時期。])と申して、この間もまた二十中劫じゃ。初めの十九劫には、地獄を始め、有情([人間])は皆失せる。失せると申すのは、どこかへいなくなることではない。皆天上に生まれるのじゃ。ただし地獄の業の尽きぬ衆生([人])は、別の三千界([三千大千世界]=[仏教の世界観による広大無辺の世界])の地獄へしばらく移すのじゃ。こうして第二十度目の劫に、水輪が現れ、下には風輪([三輪]=[この世の地下にあって世界を支えているという金輪こんりん・水輪・風輪の三つ])が、風が吹き遥か上の梵天まで、山河も何もかもなく焼け失せてしまうのじゃ。このように世はなくなるので、壊劫と申すのじゃ。


続く


by santalab | 2014-01-22 19:52 | 水鏡

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