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「義経記」義経鬼一法眼が所へ御出の事(その4)

わらはまうしけるは、「法眼ほふげん華飾くわしよく世に越えたる人にて、しかるべき人たちの御入りの時だにも子どもを代官だいくわんに出だし、我は出で合ひまゐらせぬくせ人にてさうらふ。まして各々のやうなる人の御出でを賞翫しやうくわん候ひて対面ある事候ふまじ」と申しければ、御曹司おんざうし、「彼奴きやつは不思議の者の言ひ様かな。主も言はぬ先に人の返事をする事は如何に。入りてこの様を言ひてかへれ」とぞおほせける。「申すとも御用ごもちゐあるべしとも思えず候へども、申して見候はん」とて、内に入り、しゆうまへひざまづき、「かかる事こそ候はね。門に年頃十七八かと思え候ふ小冠者こくわんじや一人佇み候ふが、『法眼はおはするか』と問ひ奉り候ふほどに、『御渡り候ふ』と申して候へば、『御対面あるべきやらん』と申しける」。「法眼を洛中にて見下げて、さやうに言ふべき人こそ思えね。人の使ひか、己がことばか、よく聞きかへせ」と申しける。




童が申すには、「法眼(鬼一法眼)の華飾([不遜])は世に越えた人ですから、身分の高い人たちが訪ねられてもしかるべき人たちの御入り子を代官として出させ、本人は会わないほどの曲者でございます。ましてやあなたほどの人が訪ねられても賞翫([珍重すること])されて面会されません」と申したので、御曹司(源義経)は、「お前はおかしな奴だな。主が何も申していないのに返事をするとは何事ぞ。早く屋敷に戻って申せ」と申しました。童は「申してみても対面されるほずもございませんが、ともかく申しましょう」と答えて、内に入り、主の前にひざまずいて、「おかしなことがございました。門に年頃十七八かと思われる小冠者が一人立っておりまして、『法眼はおられるか』と訊ねたので、『おられます』と申せば、『法眼にお目にかかりたい』と申したのでございます」。法眼は「わし法眼を洛中の者が見下げて、そのような事を申すとも思えぬ。人の使いか、小冠者が申すのか、よく聞き返せ」と申しました。


続く


by santalab | 2014-01-27 07:38 | 義経記

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