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「義経記」三の口の関通り給ふ事(その10)

ある関守まうしけるは、「しばらくしづまり給へ。判官はうぐわんならぬ山伏殺して後の大事なり。関手を乞うて見よ。昔より今に至るまで、羽黒山伏の渡し賃関手なす事はなきぞ。判官はうぐわんならば仔細を知らずして関手をなしてとほらんと急ぐべし。げんの山伏ならば、よも関手をばなさじ。これを以つて知るべき」とて、賢々さかさかしげなるをとこ進み出でてまうしけるは、「所詮山伏なりとても、五人三人こそあらめ、十六七人の人々にいかでか関手を取らではあるべき。関手なして通り給へ。鎌倉殿の御教書みげうしよにも乙家おつけ甲家かうけを嫌はず、関手取りて兵糧米ひやうらうまいにせよと候ふあひだ、関手を賜はり候はん」とぞ申しける。




ある関守が申すには、「しばらく静かにせよ。判官(源義経)でなければ山伏を殺しては後の大事となろう。関手([関銭]=[関所を通る人馬・荷物などに課した通行税])を払えと申してみよ。昔より今に至るまで、羽黒山伏が渡し賃関手を払ったことはない。もし判官ならばこれを知らず関手を払ってでも急ぎ通ろうとするはずだ。本当のの山伏ならば、よもや関手を払うまい。これで判断しようではないか」と言って、知恵のありそうな男が進み出て申すには、「山伏だと申されようが、五人三人ならばともかく、十六七人の人々に対して関手を取らないわけにはいかない。関手を払って通れ。鎌倉殿(源頼朝)の御教書([平安時代以後、三位以上の公卿または将軍の命を奉じてその部下が出した文書])にも誰かれと言わず、関手を取って兵糧米にせよと書かれておる、関手を払っていただこう」と申しました。


続く


by santalab | 2014-02-22 16:16 | 義経記

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