Santa Lab's Blog


「義経記」忠信吉野山の合戦の事(その20)

これほどの所を跳ね損じて、死ぬるほどのごふになりては力及ばず。八幡はちまん大菩薩、知見を垂れ給へと祈誓して、えいごゑを出だして跳ねたりければ、後ろの山へ相違さうゐなく飛び付きて、うへの山に差し上がり、松の一叢ひとむらありける所によろひ脱ぎ、打ち敷きて、兜の鉢枕にして、かたきのあはてふためく有様を見てぞたりける。大衆だいしゆまうしけるは、「あら恐ろしや。判官はうぐわん殿かと思ひつれば、佐藤四郎兵衛しらうびやうゑにてありけるものを。たばかられおほくの人を討たせつるこそ安からね。大将軍だいしやうぐんならばこそ首を捕つて鎌倉殿の見参げんざんにも入れめ。憎し、ただ置きて焼き殺せや」とぞ言ひける。




これほどの所を飛び損じて、死ぬるほどの業([その善悪に応じて果報を生じるもの])ならば仕方ないこと。八幡大菩薩よ、知見([事物に対する正しい認識])を見せ給へと祈誓して、えいと声を出だして飛び跳ねると、忠信ただのぶ(佐藤忠信)は後ろの山へ仕損じることなく飛び付いて、上の山に登り、松が一叢生えた所で鎧を脱ぎ、敷いて、兜の鉢を枕にして、敵があわてふためく様子を眺めていました。大衆([僧])が申すには、「なんということか。判官殿(源義経)だと思っていたが、佐藤四郎兵衛(忠信)だったとは。まんまと騙された上に多くの者を討たせたとあっては腹の虫が治まらぬ。大将軍ならば首を捕って鎌倉殿(源頼朝)のお目にかけようと思っていたのだ。憎い奴め、閉じ込めたまま焼き殺してしまえ」と言いました。


続く


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by santalab | 2014-02-26 00:54 | 義経記

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