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「義経記」静鎌倉へ下る事(その3)

親家ちかいへも道すがら様々にいたはりてぞ下りける。とかくして都を出で、十四日に鎌倉に着きたり。この由まうし上げければ、しづかを召してたづぬべき事ありとて、大名だいみやう小名せうみやうをぞ召されける。和田、畠山、宇都宮、千葉、葛西、江戸、河越かはごえを始めとして、その数を尽くしてまゐる。鎌倉殿には門前に市をなしておびたたし。二位にゐ殿もしづかを御覧ぜられんとて、幔幕まんまくを引き、女房にようばうその数参り集まり給ひけり。藤次とうじばかりこそ静を具して参りたれ。鎌倉殿これを御覧じて、いうなりけり、現在おととの九郎だにも愛せざりせばとぞ思し召しける。禅師ぜんじも二人の女も連れたりけれども、門前に泣きたり。鎌倉殿これを聞こし召して、「門にをんなこゑとして泣くは、何者ぞ」と御たづねありければ、藤次「静が母と二人の下女にてさうらふ」とまうしければ、鎌倉殿、「女は苦しかるまじ、召せ」とて召されけり。




親家(堀親家)も道中様々に静御前の世話をしながら関東に下りました。こうして都を出て、十四日目に鎌倉に着きました。頼朝にこれを申し上げると、静御前を呼んで訊ねることがあると、大名小名を集めました。和田(和田義盛よしもり)、畠山(畠山重忠しげただ)、宇都宮(宇都宮朝綱ともつな)、千葉(千葉常胤つねたね)、葛西(葛西清重きよしげ)、江戸(江戸重長しげなが)、河越(河越重頼しげより)を始めとして、その数を尽くして参りました。鎌倉殿は門前に市をなして人だかりとなりました。二位殿(北条政子)も静御前を見ようと、
幔幕([行事の場所などを他と区別するためまわりを囲むのに用いられる布製の用具])を引き、女房はある数参り集まりました。藤次(堀親家)一人静御前を連れて参りました。鎌倉殿(源頼朝)はこれを見て、なんと美しいのだ、弟の九郎(源義経)さえ愛していなければと思いました。磯禅師(静御前の母)も二人の女(催馬楽さいばら其駒そのこま)も連れて来ましたが、門前で泣き別れました。鎌倉殿これを聞いて、「門に女の声がして泣いておるが、何者だ」と訊ねると、藤次堀親家)が「静の母と二人の下女でございます」と申したので、鎌倉殿(頼朝)は、「女なら問題なかろう、内へ呼べ」とて申して呼び入れました。


続く


by santalab | 2014-02-28 09:36 | 義経記

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