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「義経記」静若宮八幡宮へ参詣の事(その16)

鎌倉殿聞こし召して、「あはれこれはたれまうしつるぞ」と御たづねありければ、「佐原さはら十郎じふらう申して候ふ」と申す。「佐原故実こしつの者なり。もつともさるべし。やがて支度してまゐらせよ」とおほせられけり。十郎うけたまはりて、急ぎの事なりければ、若宮修理しゆりの為に積み置かれたる材木を一時に運ばせて、高さ三尺さんじやくに舞台を張りて、唐綾、絞紗もんじやを以つてぞ包みたる。鎌倉殿御感ぎよかんありける。しづかを待つに、日はすでにの時ばかりになるまで参詣なし。「如何なる静なれば、これほどに人の心を尽くすらん」などぞまうしける。遙かに日長けて、輿を舁きてぞ出で来たる。左衛門さゑもんじよう、藤次が女房にようばうもろともに打ち連れて廻廊にぞまうでたりける。




鎌倉殿(源頼朝)はこれを聞いて、「誰が申したのだ」と訊ねると、「佐原十郎(佐原義連よしつら)です」と申しました。頼朝は「佐原(義連)は故実の者([儀式・法制・作法などに詳しい者])である。なるほどのう。すぐに支度せよ」と命じました。十郎(義連)は承って、急ぎの事でしたので、若宮修理のために積み置かれた材木を急ぎ運ばせて、高さ三尺(約90cm)の舞台をつくり、唐綾、絞紗([模様の付いた絹織物])を張りました。鎌倉殿(頼朝)は感心しました。静御前を待ちましたが、日はすでに巳の時([午前十時頃])になって参詣しませんでした。「いったい静は、いつまで人を待たせれば気が済むのだ」などと申しました。遙かに日が長けてから、輿に乗ってやって来ました。左衛門尉(工藤祐経ゆうすけ)、藤次(堀親家ちかいへ)の女房とともに廻廊に詣でました。


続く


by santalab | 2014-03-02 07:47 | 義経記

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