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「義経記」静若宮八幡宮へ参詣の事(その21)

畠山にこの仔細を「御諚ごぢやうにてさうらふ」とまうしければ、畠山、「君の御内きりせめたる工藤左衛門ざゑもんつづみ打ちて、八箇国はつかこくさぶらひの所司梶原かぢはら銅拍子とびやうし合はせて、重忠しげただが笛吹きたらんずるは、俗姓ぞくしやう正しき楽党がくたうにてぞあらんずらむ」と打ち笑ひ、おほせに従ひまゐらすべき由を申し給ひつつ、二人の楽党は所々より思ひ思ひに出で立ち出でられけり。左衛門さゑもんじようは、紺葛こんくずの袴に、木賊色とくさいろの水干に、立烏帽子、紫檀の胴に羊の皮にて張りたるつづみの、六つの調しらを掻き合はせて、左の脇に掻い挟みて、袴のそば高らかに差し挟み、うへの松山廻廊くわいらう天井てんじやうに響かせ、手色ていろ打ち鳴らして、残りの楽党がくたうを待ちかけたり。




畠山(畠山重忠しげただ)にこのことを「鎌倉殿(源頼朝)の御諚([命])でございますれば」と申せば、畠山(重忠)、「君(源頼朝)の身内で一番の工藤左衛門が鼓を打ち、八箇国の侍の所司([鎌倉幕府の侍所の次官])であられる梶原(梶原影時かげとき)が銅拍子([中央が椀状に突起した青 銅製の円盤二個を両手に持って打ち合わせるもの])を合わせて、わたし(畠山)重忠が笛を吹けば、由緒正しい楽党となりましょう」と微笑んで、命に従い参ると申したので、二人の楽党は所々より思い思いに出で立ち出でました。左衛門尉(工藤祐経ゆうすけ)は、紺葛の袴に、木賊色([黒みを帯びた緑色])の水干に、立烏帽子、紫檀の胴に羊皮を張った鼓の、六つ緒の調べを合わせて、左脇に挟み、袴の稜を高く差し挟み、上の松山廻廊の天井に響かせ、手色([調子])よく打ち鳴らして、残りの楽党を待ちました。


続く


by santalab | 2014-03-02 08:12 | 義経記

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