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「滝口入道」鴆毒(その6)

まことや、恋に迷へる者はなほ底なき泥中でいちゆうおちいるが如し。一寸上に浮かばんとするは、一寸下に沈むなり。一尺岸に上らんとするは、一尺底に下るなり、所詮自ら掘れる墳墓にうづまるる運命は、悶え苦しみてわづかの益もなし。されば悟れるとは己が迷ひを知ることにして、そを脱せるのひにはあらず。哀れ、恋の鴆毒ちんどくかすも残らず飲み干せる滝口は、ただただして致命の時を待つのほかなからん。




実に、恋に迷える者は言わば底なき沼の泥中にはまり込んだようなものでした。一寸(約3cm)上に浮かぼうとすればするほど、一寸下に沈みました。一尺(約30cm)岸に上ろうとすればするほど、一尺底に下りました、所詮自ら掘った墳墓に埋まるような運命は、悶え苦しむばかりで何の甲斐もありませんでした。なれば悟るとは己の迷いを知ることであり、そこから抜け出すことにほかなりませんでした。ああ、恋の鴆毒([鴆=中国に住むという架空の鳥の羽にある猛毒])を一滴残らず飲み干した滝口(斎藤時頼ときより)には、ただただそのまま致命([死])の時を待つほか何も残っていませんでした。


続く


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by santalab | 2014-03-05 00:15 | 滝口入道

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