Santa Lab's Blog


「滝口入道」暇乞(その2)

短き秋の日影もやや西に傾きて、風の音さへ澄み渡る葉月半ばの夕暮れの空、前には閑庭を控へて左右は回廊を廻らし、青海の御簾みす長く垂れ込めて、微月の銀鈎ぎんこう空しく懸かれる一室は、小松殿が居間なり。内には寂然じやくねんとして人なきが如く、ただただ御簾を漏れて心細くも立ち迷ふ香煙一縷いちる、をりをりかすかに聞こゆる憂々の音は、念珠を爪繰つまぐる響きにや、主が消息をもたらして、いと奥床おくゆかし。




短い秋の日もやや西に傾いて、風の音さえ澄み渡る葉月([陰暦八月])半ばの夕暮れ時でした、前には閑庭([もの静かな庭])左右には回廊を廻るらして、青海の御簾を長く垂れ、かすかな月の光がわずかに差し込む一室が、小松殿(平重盛しげもり)の居間でした。中はひっそりと静かで人がいないかのよう、ただただ御簾から漏れて心細く立ち上る香煙が一筋、時々かすかに聞こえる悲しげな音は、念珠を繰る音でしょうか、主の心の内をあらわすようで、とてもしみじみとした趣きがありました。


続く


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by santalab | 2014-03-05 12:35 | 滝口入道

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