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「滝口入道」託命(その4)

「そは時頼ときよりぶんに過ぎたる仰せにて候ふぞや。現在足助あすけ二郎重景しげかげなど究竟くつきやうの人々、少将殿の小性こしやうには候はずや。弱年未熟の時頼、人に勝りし何の能ありてかかる大任を御受け申すべき」。


「いやいや左にあらず。いかに時頼、六波羅上下の武士がこの頃の有様を何とか見つる。一時の太平になれて衣紋装束に見栄を飾れども、まこと武士の魂ある者幾許いくばくかあるべき。華奢くわしや風流にすさめる重景が如き、物の用に立つべくもあらず。ただただかれが父なる与三左衛門景安かげやすは平治の激乱の時、二条堀川の辺りにて、我に代はりて悪源太がために討たれし者故、その遺功を思うて我が名の一字を与へ、少将が小性となせしのみ。繰り言ながら維盛これもりが事頼むはそなた一人。少将事あるの日、未練の最期を遂ぐるやうのことあらんには、時頼、よは草葉の陰よりそなたを恨むぞよ」。




時頼「それはこの時頼にとりましては過分の仰せでございます。今足助二郎重景景など力強い人たちが、少将殿(平維盛これもり)の小性(家来)に付いておられるではありませんか。年若く未熟なわたしが、人に勝る何の能力があってこのような大任をお受けできましょう」。


重盛「いやいやそうではないぞ、時頼よ、六波羅上下の武士たちのこの頃の有様をどう見ておるか。一時の平和に馴れて衣紋([着物])装束に見栄を飾っておるが、真に武士の魂ある者がどれほどいるというのか。華奢([華やかに奢ること])風流にふける重景のような者が、戦の役に立つとはとても思えぬ。ただやつの父与三左衛門景安(「平治の乱」で討たれた平景安)が平治の乱の時、二条堀川のあたりで、わしの代わって悪源太(源義平よしひら義朝よしともの嫡男)で討たれて、その遺功([死後に残る功績])としてわしの名の一字を与え、少将(維盛)の家来に取り立てたまでのこと。何度も言うが維盛の事を頼むのはそなた一人だけぞ。維盛の身に何かあって、恥しい最期を遂げるようなことがあれば、時頼よ、わしは草葉の陰からお主を恨むぞ」。


続く


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by santalab | 2014-03-06 10:19 | 滝口入道

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