Santa Lab's Blog


「滝口入道」無常(その5)

立ち上がりつつ築垣ついがきのあなたを見やれば、琴の音かすかに聞こゆ。月を友なる恨み声は、もしや我が慕ひてし人にもやと思へば、一期の哀れおのづから催されて、ありし昔はさすがにあだならず、あはれ、りても合はぬ片糸の我が身の運は是非もなし。ただただ塵の世に我が想ふ人のとこしなへにけがれざれ。恋に望みを失ひても、世をはかなみし心の願ひ、優にたつとし。




滝口(斎藤時頼ときより)が立ち上がりながら築垣([土塀])の向こうに目をやると、琴の音がかすかに聞こえました。月を友とする滝口の耳には、もしかしたらわたしが恋した人が弾く恨み声に聞こえました、最後の悲しみが溢れ出して、昔はさすがに無ではなく、ああ、縒っても合うことがない片糸のような我が身の運も尽きてしまったかと思う滝口でした。ただただ塵の世に我が想う人が永遠に汚されないようにと願いました。恋に希望を失っても、世をはかなんでの願いは、とても清いものでした。


続く


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by santalab | 2014-03-06 12:33 | 滝口入道 | Comments(0)

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