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「滝口入道」無常(その6)

千緒万端せんしよばんたんの胸の思ひを一念「無常」の溶炉に溶かし去りて、澄む月に比べん心の明るさ。いづれ終はりは同じ錦衣玉食きんいぎよくしよく、白骨を抱きて栄枯を計りし昔の夢、観じ来れば世に秋風の哀れもなし。君も、父も、恋も、情けも、さては世に産声うぶごゑ上げてより二十三年の旦夕に畳み上げ折り重ねし一切の衆縁、六尺の皮肉と共に夜半よはの嵐に吹き籠めて、行方も知らぬ雲か煙。跡には秋深く夜静かにして、渡るかりがねの声のみ高し。




千緒万端([種々雑多な事柄])の胸の思いを一つ心「無常」の溶炉([金属をとかすための炉])に溶かして、澄む月に比べるばかりの滝口(斉藤時頼ときより)の心の明るさでした。仏道に入らなければ錦衣玉食([ぜいたくな生活をすること])の日々を送り、白骨を抱いて栄枯([盛衰])を見たであろうことも今は昔の夢、悟れば世に秋風の悲しみはありませんでした。君(平重盛しげもり。清盛の嫡男)も、父(斉藤茂頼もちより)も、恋も、情けも、世に産声を上げてから二十三年間朝夕積み上げた一切の衆縁([この世のさまざまな因縁])も、六尺(約1.8m)の体とともに夜中の嵐に吹き飛んで、行くへも知らない雲か煙となったような気がしました。跡には秋深く夜静かで、渡る雁の声だけが聞こえるばかりでした。


続く


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by santalab | 2014-03-06 12:37 | 滝口入道

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