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「滝口入道」憂身(その4)

顔差し覗きて猫撫で声、「や、や」と媚びるが如くみを含みて袖を引けば、今までいらへもせずうつむき居たりし横笛は、引かれし袖を切るが如く打ち払ひ、たちまち柳眉りゆうびを逆立て、言葉鋭く、「無礼なめけにはおはさずや冷泉様、栄華のために身を売る遊女舞妓ぶぎと横笛を思ひ給うてか。ただしはこの横笛をあくまで不義淫奔いんぽんおとしいれんとせらるるにや。またしても問ひもせぬ人の批判、かつは深夜に道ならぬ仲立、横笛迷惑の至り、御帰りあれ冷泉様、ただし高声上げて宿直とのゐの侍を呼び起こし申さんや」。




冷泉は横笛の顔を覗き込むようにして猫撫で声で、「さあ、さあ返事なさいませ」と媚びるように微笑みながら横笛の袖を引くと、今まで返事もせずにうつむいていた横笛でしたが、引かれた袖を断ち切るように打ち払って、たちまち眉を逆立てて、厳しい口調で、「あまりにも無礼ではありませんか冷泉様、栄華のために身を売る遊女舞妓([舞を舞う女性])とでもこのわたしのことを思ってのことですか。それともこのわたしを不義淫奔([性関係にだらしのないこと])の身におとしいれようとしているのでしょうか。問いもせぬ人を批判し、夜中に道理もない仲立ちをなされるのは、わたしにとっては迷惑千万、お帰りなさいませ冷泉様、でなければ大声を上げて宿直の侍を呼びますわよ」と言いました。


続く


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by santalab | 2014-03-06 17:58 | 滝口入道

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