天平勝宝四年三月十四日に東大寺の大仏に初めて黄金を塗り奉りき。四月九日、万僧を請じて供養し奉り給ひき。今年ぞかし。道鏡内へ参りて如意輪法を行ひ給ひしほどに、やうやう御門の御覚え出で来始まりしなり。弓削の法皇と申ししはこの人なり。宝字二年、御門、位を東宮に譲り奉り給ひて、太上天皇と申しき。
天平勝宝四年 (752) の三月十四日に東大寺(現奈良県奈良市にある寺)の大仏に初めて黄金が塗られました。四月九日に、万僧を請じて開眼供養を執り行いました。この年のことです。道鏡が内裏に参り如意輪法([如意輪観音を本尊として福徳増起などのために修する秘法])を行なった頃から、次第に孝謙天皇(第四十六代天皇)から重用されるようになりました。弓削法皇と申すは道鏡のことです。天平宝字二年(758)に、孝謙天皇は、位を東宮に譲られて、太上天皇となられました。
(続く)