光陰惜しむべし、時人を待たざる理、隙行く駒、つながぬ月日重なりて、一萬は十三歳になりにける。身の不祥なるに、また、公方を憚る事なれば、秘かに元服して、継父の名を取り、曽我の十郎祐成と名乗りける。
光陰([時間])を惜しまなくてはなりません、時は人を待たない道理、隙行く駒([年月の早く過ぎ去ることのたとえ])、つながぬ月日([月日は刻々に過ぎ去り、瞬時もとどまることのないたとえ])は重なり、一萬は十三歳になりました。身は不祥([不運])である上、また、公方([将軍家])には知られてはならないことでしたので、秘かに元服して、継父(曽我祐信)の名を取り、曽我十郎祐成と名乗りました。
(続く)