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「曽我物語」三浦の片貝が事(その2)

いつとなく、行きむつぶる事なれば、伯母は十郎じふらうかたはらに招き寄せ、「これに、片貝かたかひとて、召し使ふをんなあり。かたち・心様・品、世に越えたり。一人あれば、如何なる事もこそと覚束無なく思ゆれば、風の便りのおとづれに、まつには音する習ひなり。何かは苦しかるべき。曽我へ具足し給へかし」と語りければ、親方の言ふ事なり、かねても斯様かやうの事とは夢にも知らで、「さうけたまはりぬ」と言ふ。女房にようばう、やがて片貝を呼び出だして、しかしかと語る。十郎は、曽我にさして用の事ありければ、その夜を待つまでもなく、暮れほどにかへりけり。




いつとなく、通っていましたので、伯母は十郎(祐成すけなり)をそばに招いて、「ここに、片貝と言う、召し使う女がおります。姿かたち・心様・品([位])は、世の者に越えております。まだ結婚しておりませんので、何か起こるのではないかと心配しております、風の便りのおとづれに、待つ女は松風を立てるものでございますれば。あなたには妻もいないことですし不都合はないでしょう。曽我(現神奈川県小田原市)へ連れて行ってくれませんか」と話したので、親方([親のような人])の言うことでもあり、かねて事情を夢にも知りませんでしたので、「分かりました」と答えました。女房たちは、すぐに片貝を呼び出して、曽我に移るよう言いました。けれども十郎(祐成)は、曽我に急ぎの用があったので、その夜を待つことなく、暮れほどに帰って行きました。


続く


by santalab | 2014-05-11 22:36 | 曽我物語

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