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「竹取物語」(その39)

人々浅ましがりて、寄りて抱え奉れり。御目は白眼しらめにて伏し給へり。人々、水をすくひ入れ奉る。からうして生き出で給へるに、またかなへの上より、手取り足取りして、下げ降ろし奉る。からうして、「御心地はいかがおぼさるる」と問へば、息の下にて、「物は少し覚ゆれど、腰なむ動かれぬ。されど、子安貝をふと握り持たれば、嬉しく思ゆるなり。先づ紙燭しそくさせて。この貝、顔見む」と御頭みぐしもたげて、御手を広げ給へるに、つばくらめのまり置ける古糞を握り給へるなりけり。それを見給ひて、「あな、貝なのわざや」とのたまひけるよりぞ、思ふに違ふことをば、「甲斐なし」と言ひける。




家来たちは予想外のことにびっくりして、石上麻呂足のまわりに集まって体を抱えました。中納言は白眼をむいて倒れていました。家来たちは、水を口にすくい入れました。どうにかこうにか息を吹き返したので、八島の鼎の上から、手取り足取りで、中納言を降ろしました。一段落ついて、「お心地はいかがですか」と聞くと、息も絶え絶えながら、「意識は少しあるが、腰がまったく動かない。だが、『燕の子安貝』をとっさに握り持って、嬉しかったことは覚えておるぞ。すぐに紙燭(室内用の照明具)を持って来い。この貝を、おがみたいのだ」と頭を起こして、手を広げてみれば、燕が排泄して残した古糞を握っていたのでした。それを見て、石上麻呂足が「ああ、貝ではなかったのか」と言ってから、思ったことと違った結果になることを、「甲斐なし」(「貝無し」)と言うようになりました。


続く


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by santalab | 2014-05-17 09:54 | 竹取物語

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