かぐや姫に、「早や、かの御使ひに対面し給へ」と言へば、かぐや姫、「よき容貌にもあらず。いかでか見ゆべき」と言へば、「うたてものたまふかな。帝の御使ひをば、いかでか疎かにせむ」と言へば、かぐや姫の答ふるやう、「帝の召してのたまはむこと、賢しとも思はず」と言ひて、さらに見ゆべくもあらず。生める子のやうにあれど、いと心恥づかしげに、疎かなるやうに言ひければ、心のままにもえ責めず。
おばあさんはかぐや姫に、「さあ急いで、帝からの使いにお会いしなさい」と言えば、かぐや姫は、「わたしはそんなに美しい容貌ではありません。どうしてお会いしなければならないのですか」と答えたので、おばあさんは、「そんな失礼なことをいうものではありませんよ。帝のお使いを、どうして疎かにできましょうか」と言えば、かぐや姫は、「帝の申されたことですが、賢明とは思えません」と答えて、まった会おうともしませんでした。おばあさんは、自分が産んだ子のように思っていましたが、かぐや姫はとても恥ずかしそうに、けれどきっぱりと答えたので、おばあさんはかぐや姫を心のままに責めることもできませんでした。
(続く)