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「松浦宮物語」一(その19)

この君ゆゑ、うれしくも面立おもだたしき時も、そこらおほかりしかども、またたぐひなき目を見るにも、様々思し続けられて、いたく泣き給ふ。大将今年ぞ四十六になり給ふ。盛りに清げにて、薄色の固文かたもん指貫さしぬきに、萌黄もえぎなど、直衣なほし、薄色、くれなゐなど、わざとならぬしもいみじうめでたし。皇女みこは三十四になり給ふ。白き御衣おんぞどもに薄色・萌黄など、殊なる色合ひならねど、限りなくあてになまめしき御様なり。




この君(弁少将氏忠うぢただの母。明日香の皇女)を妻にして、うれしい時も晴れがましい時も、数多くありましたが、またこのようなかたちで別れることになるものよ、とあれこれと思い続けて、ひどく泣くのでした。大将は今年で四十六になっていました。盛りにして美しく、薄色の固文([綾織物の模様を糸を浮かせないで、おさえて織り出したもの])の指貫([袴])に、萌黄([黄緑色])の衣、直衣([天皇以下、貴族の平常服])は、薄色、紅など、わざとらしくない様でりっぱに見えました。明日香の皇女は三十四でした。白い衣に薄色・萌黄など、取り立てた色合いではありませんでしたが、限りなく上品で若々しく見えました。


続く
by santalab | 2014-05-18 10:35 | 松浦宮物語

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