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「太平記」義貞夢想の事付諸葛孔明事(その4)

劉備三度みたび彼の草庵の中へをはしてのたまひけるは、『朕不肖ふせうの身を以つて、天下てんがの太平を求む。全く身を安んじ、欲を欲しいままにせんとにはあらず。ただ道の塗炭どたんち、民の溝壑こうがくしづみぬる事を救はん為のみなり。きみもし良佐りやうさの才を出だして、朕が中心を助けられば、ざんに勝ち、さつを棄てん事、何ぞ必ずしも百年を待たん。それ石を枕にし泉に口漱くちすすいで、幽栖いうせいを楽しむは一身の為なり。国を治め民を利して大化を致さんは、万人の為なり』と、まことを尽くし理をきはめておほせられければ、孔明こうめい辞するにことばなくして、遂に蜀の丞相しようじやうと成りにけり。




劉備は三度孔明の草庵を訪ねて申すには(三顧の礼)、『わたしは不肖の身ながら、天下の太平を望む者である。まったく我が身のためでもなく、欲を欲しいままにするためではない。ただ道の塗炭([きわめて辛い境遇])に堕ち、民が溝壑([谷間])に沈んでおるのを救いたいだけぞ。貴殿がもし良佐の才(優れた才能)を出して、わたしを助けてくれるのなら、残([損なうこと])なく、殺を捨てるのに、無駄に百年を待つことはないのだ。貴殿が石を枕にし泉で口を漱いで、幽栖([俗世間を離れて静かに住むこと])を楽しむのは一身のためではないか。国を治め民を利して大化を致すことこそ、万人のためになるのだ』と、真心を尽くし道理を究めて申したので、孔明は辞す詞をなくして、遂に蜀の丞相([君主を補佐した 最高位の官吏])となったのじゃ。


続く
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by santalab | 2014-06-10 08:35 | 太平記 | Comments(0)

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