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「太平記」義貞夢想の事付諸葛孔明事(その9)

それより蜀先づ亡び呉後に亡びて、魏の曹操遂に天下てんがを保ちけり。この故事を以つて、今の御夢を料簡れうけんするに、事のやう、魏呉蜀三国の争ひに似たり。なかんづくりようは陽気に向かつては威を振るひ、陰の時に至りては蟄居ちつきよを閉づ。時今陰の初めなり。しかも龍の姿にて水辺に臥したりと見給へるも、孔明こうめい臥龍ぐわりようと云ひしに不異。されば面々は皆、めでたき御夢なりと合はせられつれども、道献だうけんあながちに甘心かんしんせず」と眉をひそめて云ひければ、諸人げにもと思へる気色なれども、心に忌み言葉に憚つて、凶とする人なかりけり。




それにより蜀がまず亡び呉も後に亡んで、魏の曹操が遂に天下を取りました(この時曹操はすでに亡くなっている。魏が蜀を統一したのは曹操の子曹丕さうひの時代、三国統一したのは司馬懿の孫に当たる司馬えん、西晋の初代皇帝)。この故事を引いて、今の夢を料簡([考えを廻らせること])すると、夢が意味するところは、魏呉蜀三国の争いを暗示しているように思われる。申すまでもなく竜は陽気に向かっては威を振るうが、陰の時に至れば蟄居([引き籠ること])するものだ。時は今陰の初めである。しかも龍の姿で水辺に臥したと見たのも、孔明(諸葛孔明)を臥龍と呼んだのと同じぞ。されば面々は皆、めでたい夢だと申しておるが、この道献(斎藤七郎)は決して吉兆だとは思わない」と眉をひそめて云うと、諸人はたしかにと思う気色でしたが、不吉なことでもあり言葉に憚って、凶事と言う者はいませんでした。


続く


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by santalab | 2014-06-10 09:04 | 太平記 | Comments(0)

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