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「曽我物語」虎出で合ひ、呼び入れし事(その8)

およそ、分段ぶんだん輪廻りんゑさとに生まれて、必ず死滅の恨みを得、妄想まうさう如幻によげんいへに来ては、つひに別離の悲しみあり。出づる息の、入る息を待たぬ世の中に生まれ、あまつさへ、遭ひ難き仏教ぶつきやうに遭ひながら、この度、空しく過ぐる事、宝の山に入りて、手を空しくするなるべし。急ぐべし急ぐべし、頭燃づねん払ふ如くと見えてさうらへば、あひ構へ相構へ、仏道に御心を懸け、浄土じやうどまゐらんと思し召すべきなり」とまうしければ、母も、二宮の姉も、渇仰かつがう肝に銘じて、随喜の涙を流して、申しけるは、「世路せいろに交はる習ひ、世の中の営みに心を懸け、再び三途さんづ故郷こきやうかへり、如何なる苦患くげんをか受け候はんずらんと、予ねて悲しく候ふ。




およそ、分段輪廻([六道に輪廻(りんね)する凡夫の生死])の郷に生まれて、必ず死滅の恨みを抱き、妄想如幻([幻のようにはかないこと])の家に来ては、遂に別離の悲しみに遭うのです。出づる息が、入る息を待たぬほど短い命でございますが、せっかく、遭いがたい仏教に遭いながら、この世を、むなしく過ごすことは、宝の山に入り、何も手にしないのと同じことでございます。急ぎなさいませ、頭燃([頭髪に火がついて燃えはじめること。危急のたとえ])を払うようなものでございますれば、よくよくお考えになられて、仏道に帰依され、浄土(極楽浄土)に参ろうと願われるべきでございます」と申せば、母も、二宮の姉も、渇仰([深く仏を信じること])の念を肝に銘じて、随喜の涙を流して、申すには、「世路([渡る世の中])に交わっておりますれば、世の中のことが気になるものでございます、再び三途([地獄道・畜生道・餓鬼道])の故郷に帰り、どのような苦患([地獄におちて受ける苦しみ])を受けることでしょうと、かねてより悲しく思っておりました。


続く
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by santalab | 2014-06-14 13:43 | 曽我物語

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