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「曽我物語」母、二宮行き別れし事(その4)

さて、かの二人の尼、心ざし浅からず、虎、峰に上りて、花を摘めば、少将せうしやう、谷に下りて、水を結び、一人、花を供ふれば、一人は、かうを焚き、ともに一仏浄土いちぶつじやうどの縁を結ぶ。谷のみづ、峰の嵐、発心ほつしんなかだちと成り、花の色、鳥のこゑ、自づから観念くわんねんの頼りと成る。つくづく思へば、はつふつ転変てんべんことわり四相しさう遷流せんるの習ひ、三界さんがいより下界げかひに至るまで、一つとして逃るべきやうなし。日月天にめぐりて、有為うゐ旦暮たんぼあらはし、寒暑かんしよ時をたがへずして、無常むじやう昼夜ちうやに尽くす。




さて、かの二人の尼(虎御前と手越少将)は、仏道に帰依する心ざし浅からず、虎御前(祐成すけなりの妾)が、峰に上り、花を摘めば、手越少将(工藤祐経すけつねの妾)は、谷に下りて、水を汲み、一人が、花を供えれば、一人は、香を焚き、ともに一仏浄土([阿弥陀仏の極楽浄土])に往生することを願いました。谷の水、峰の嵐は、発心の仲立ちとなり、花の色、鳥の声は、自然と観念([物事に対してもつ考え])の頼りとなりました。つくづく思へば、はつふつ転変(万物転変?[転変]=[生滅・変化すること])の道理、四相遷流([四相]=[生・老・病・死])の習いは、三界([欲界・色界・無色界])より下界([人間界])にいたるまで、一つとして遁れることはできませんでした。日月は天を廻り、有為([生滅する現象世界の一切の事物])を旦暮([朝夕])に顕し、寒暑は時に従い、無常を昼夜に尽くすのでした。


続く
by santalab | 2014-06-18 08:32 | 曽我物語

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