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「源氏物語」幻(その12)

如月になれば、花の木どもの盛りなるも、まだしきも、梢をかしう霞み渡れるに、かの御形見の紅梅に、鴬の華やかに鳴き出でたれば、立ち出でて御覧ず。

「植ゑて見し 花のあるじも なき宿に 知らず顔にて 来ゐる鴬」

と、うそぶき歩かせ給ふ。




如月([陰暦二月])になれば、梅は花盛りもあり、まだつぼみのものにも、梢には霞がかかり風情がありました、紫の上(光源氏の妻)の形見である紅梅に、鶯が人目を引き付けるかのように鳴き始めたので、六条院【光源氏】は庭に出て紅梅に目を遣りました。

「紅梅を植えて毎年花を愛でた、主人(紫の上)もいなくなったこの宿に、知ってか知らずか、今年もやって来て鳴く鶯よ。」

と、口ずさみながら庭を歩きました。


続く


by santalab | 2014-06-26 09:00 | 源氏物語

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