人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「源氏物語」幻(その35)

正日しやうにちには、上下の人々皆斎して、かの曼陀羅など、今日ぞ供養ぜさせ給ふ。例の宵の御行ひに、御手水てうづなど参らする中将の君の扇に、

「君恋ふる 涙は際も なきものを 今日をば何の 果てといふらむ」

と書き付けたるを、取りて見給ひて、
「人恋ふる わが身も末に なりゆけど 残り多かる 涙なりけり」

と、書き添へ給ふ。




正日([正忌日]=[命日])には、身分の上下の人々は皆潔斎して、曼荼羅などを、今日の紫の上の一回忌のために供養しました。いつもの宵の勤行に、手水などを参らせる中将の君(女房)の扇に、

「君【紫の上】を恋しく思い出して、涙の乾く隙もありませんのに、今日の日をどうして果て([ 喪の終わり])と呼べましょう。」

と書いてあるのを、六条院【光源氏】は取り上げて見て、
「紫の上を恋しく思う我が余命も残り少なくなったが、まだまだ残り多い涙であることよ。」

と、書き添えました。


続く


by santalab | 2014-06-27 19:46 | 源氏物語

<< 「源氏物語」幻(その36)      「源氏物語」幻(その34) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧