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Santa Lab's Blog


「酔い源氏」夢浮橋(その6)

薫大将は女の弟の童【小君】を、供に連れて来ていました。ほかの兄弟たちに優り顔かたち美しい者でした、これを呼び出して、「この子は、その人に近い縁の者ですが、この子を先ず遣ることにします。どうか文を一行書いてください。その人でなく、ただ探している人がいる、とばかり書いていただければ結構です」と申しました。僧都は「このわたしが、文を書けば、かならずや罪を被ることになりましょう。知る限りのことは、先ほどすべてお話ししました。これより先は、大将殿【薫】がお立ち寄りになり、お話しするなりなさるべきでしょう、そのことには何の支障もございません」と申しました、大将殿(薫)は笑って、「罪作りの導と思っておられるのなら、お恥ずかしい限りです。わたしが、俗の姿で今まで過ごしてきたことが不思議に思えます。幼い頃より、仏に帰依する心ざしは深くありましたが、三条の宮【朱雀院女三の宮】(薫の生母)が、心細く思われて、頼むべくもない我が身ひとつを縁と思われていましたので、避けることのできないものに思えて、浮き世に関わってきたのです、自然と位も高くなり、身の置き所さえ思うままにはいかなくて、出家を願いながらもこうして過ごして参りました、避けられないことも、数増さりつつ過ごし、公私ともに遁れられないことですれば、仕方のないことでした。それでも、仏が戒められたことは、わずかに聞き及ぶことであっても、どうして破ることができようと、慎んで参りました、心の内は聖に劣らないものでございます。まして、ほんの些細なことで、思い罪を受けられるなどとどうして思われるのでしょうか。まったくありえないことです。ご心配なされませぬよう。ただかわいそうな親の思いなどを、話したいと思うだけのことですれば、かえって善行ともなりましょう」などと、昔から仏道への思いが深いことを話しました。


続く


by santalab | 2014-07-09 08:42 | 源氏物語

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