尼君の許へは、まだ朝早く僧都の許より、「昨夜、大将殿【薫】のお使いで、小君が参りましたか。思いもしなかったことを大将殿からお聞きして、無益なことをしたものだとかえって恐縮しておりますと姫君にお伝えください。わたしから訊ねたいことが多くありますが、後に改めて」と書いてありました。「これはどういうことかしら」と尼君は驚いて、女の許に持って参って見せれば、女は顔を赤らめて、「わたしのことが知られてしまった」と思えば胸は苦しく、「何か隠していた」と恨まれることにもなると思って、何と答えてよいのかも分からず黙っていましたが、尼君が「何か申してください。黙っていては何のことやらさっぱり」と、たいそう恨み言を申して、意外なことを知らないままに責め立てていましたが、「山より、僧都の文を携えて参った人がおります」と知らせました。
(続く)