疑いようもなく、僧都が還俗させようとしていることは明らかでしたが、ほかの人には何のことかさっぱり分かりませんでした。尼君から「この君【小君】は誰ですか。なんと悲しいこと。やはり今まで何か隠しておられたのですね」と責めました。女は少し外に目を遣ると、今が世の限りと思った夕暮れにとても恋しく思った弟でした。同じ所に住んでいた頃は、決して仲が良いとはいえずたいそう生意気で憎らしく思っていましたが、母がたいそうかわいがって宇治にも時々連れて来たので、少し大きくなってからは互いに仲良くしていました。
(続く)