僧都は母親を、娘の尼君は見知らぬ女の世話をして、二人とも抱き下ろして部屋で休ませました。年寄りの病いはよくあることで、つらいと思えるほどの長旅のせいでしたので、母はしばらく苦しそうにしていましたが、ようやく病いはよくなったので、僧都は山に帰って行きました。
僧都は「見知らぬ女を連れ帰った」などと、法師に知られるのはよくないことだと思って、見知らぬ人にはこのことは話しませんでした。尼君も女房たちに口止めして、「もし女を探しに来る人があればどうすればよいのでしょう」と思えば心配で、心は落ち着きませんでした。「どうして、あのような田舎人の住む所に、これほど高貴な人が一人残されていたのでしょう。参詣に出かけた人が病気になって、継母のような人がだまして置いて行ったのかしら」などと思うのでした。女は「川に流してください」と言うばかりでほかには何も話さないので、確かなことは知れませんでしたが「いつか元通りにして差し上げよう」と願うのでした。女はいつまで経っても起き上がることができず、よくなりそうには思えませんでしたので、尼君は「命を継ぐことは叶わないのでしょうか」と思いながらも、哀れに思って放っておくこともできませんでした。初瀬で見た夢の話をして、祈祷させた阿闍梨にも、忍んで加持祈祷をさせました。
(続く)