尼君は「そのような願いがおありならば、話し相手としてふさわしい人に思えます。世の人にないほどに世をはかなんでおられます。わたくしのように余命わずかの歳になって、今はと世を遁れるのさえもたいそう心細く思ったものでございます。まだ若い姫君が出家なさるのもどうかと思っていたのですよ」と、まるで親のように申しました。尼君は女の所へ行って「情けがないように思われますわ。さあ、わずかでも返事を差し上げなさい。このような侘しい暮らしをする者は、気が進まないことであっても情けに頼らなくてはならないのが世の常ですから」などとなだめるように申しましたが、女は「何と返事していいものかも分かりません。そのようなことをわたしに申されても」と、愛想なく答えて臥してしまいました。
(続く)