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「曽我物語」臣下ちやうしが事(その6)

重忠しげただうけたまはつて、「御助けさうらはば、如何でか、その礼なかるべき。君御許しなくは、我々までも、くわに奢るべきにあらず。さあらんに取りては、遭はざる訴訟なりとも、一度は、などや御免なからん」「理を破るほふはあれども、ほふを破る理はなし。罪科ざいくわと言ひ、法と言ひ、如何でか、彼ら逃るべき」。重忠も、まうしかかりたる事なれば、身をも命をもしまず、高声たかごゑに成りて、まうしけるは、「国を滅ぼす天譴てんけんも、三世さんせは聞かずとこそ、うけたまはりてさうらへ。釈迦如来の昔、善恵ぜんゑ仙人とまうせし時、道を作り給ふ中間ちゆうげんに、燃燈仏ねんどうぶつとほり給ふ。道悪しくして、わづらひ給ふ時に、仙人、でいうへに伏し給ひて、御髪みぐしを敷き、仏をとほし奉る。さつたい王子わうじは、飢ゑたる虎に、身を与へ、尸毘しび大王だいわうは、鳩の量りに、身を欠くる。




重忠(畠山重忠)はこれを聞いて、「お助けくださいましたら、どうして、感謝しないことがありましょう。君(源頼朝)のお許しがなければ、我々までも、果報に奢るべきではありません。もし適わぬと申されるのであれば、心ならずの訴訟なりとも、この度は、ご免いただく存じ上げます」「理を破る法はあろうとも、法を破る道理はない。罪科と言い、法と言い、どうして、彼らが逃れることができよう」。重忠も、言いがかったことでしたので、身も命も惜しまず、声を高くして、申すには、「国を滅ぼす天譴([天罰])でさえも、三世に及ぶとは聞かずと、承ります。釈迦如来が昔、善恵仙人(儒童梵士じゆどうぼんし。釈迦の前世での名)と申されていた時のことでございます、道を歩いている途中、燃燈仏(釈迦が過去世で儒童梵士と呼ばれ修行していた時、未来において、悟りを開き釈迦仏となるであろうと予言した仏 )が通りかかりました。道は悪く、燃燈仏が難儀していたので、善恵仙人は、泥の上に伏して、髪を敷き、燃燈仏を通したといいます。薩埵さつた王子(釈迦の過去世での名)は、飢えた虎に、身を与え、尸毘大王(釈迦の過去世での名)は、我が身を鳩ほど、切って鷹に与え鳩を助けたといいます。


続く


by santalab | 2014-07-23 08:49 | 曽我物語

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