人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「曽我物語」臣下ちやうしが事(その7)

これら皆、末代の衆生しゆうじやうを思し召す、御慈悲のゆゑぞかし。なかんづく、諸国ををさめ給ふ事、理非を正し、情けを宗とし、あはれみをほんとし給ふべきに、これほど面々のまうす、彼らを御助けなくては、人頼み少なく思ひ奉るべし。重忠しげただが一期の大事と思し召し、助け置かれさうらへかし」と、まこと思ひ切りたる気色で、仏法ぶつぽふ世法、唐土たうど天竺てんぢくの事まで、引き掛け引き掛け、まうされければ、君御思案ありて、「まことこの人は、内には五戒を守り、外には仁義をほんとす、賢人ぞかし。この重忠を失ひなば、神の恵みに背き、天下てんがも穏やかなるまじ」と思し召しければ、「さらば、この者ども助けさうらへ。ただし、御分一人にはあづけぬぞ。今日けふの訴訟人どもに、ことごとく許す」とおほせ下されけり。




これらは皆、末代の衆生([人])を思われて、慈悲を施されたのではありませんか。諸国を治めるということは、理非([道理にかなっていることと外れていること])を正し、情けをもち、慈悲を専らとすべきものでございます、これほど多くの者どもが申しております、彼ら(一萬・筥王)を助けなくては、人も頼りわずかと思うことでしょう。この重忠(畠山重忠)の一期の大事と思われて、助け置かれますよう」と、まこと覚悟を決めた表情で、仏法世法、唐土(中国)天竺(インド)のことまで、例に引いて、申したので、君(源頼朝)は思案して、「まことこの人は、内には五戒を守り、外には仁義を大切に思う、賢人である。この重忠を失えば、神の恵みにも背き、天下も穏やかではあるまい」と思って、「ならば、この者どもを助けよ。ただし、お主一人のことを思ってではないぞ。今日の訴訟人どもに、許すと申しておるのだ」と申しました。


続く


by santalab | 2014-07-24 08:53 | 曽我物語

<< 「曽我物語」臣下ちやうしが事(...      「曽我物語」臣下ちやうしが事(... >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧