それ、日域秋津島は、これ、国常立尊より事起こり、宇比邇・須比智邇、男神・女神を始めとして、伊弉諾・伊弉冉尊まで、以上天神七代にて渡らせ給ひき。また、天照大神より、彦波瀲武盧茲草葺不合尊まで、以上地神五代にて、多くの星霜を送り給ふ。しかるに、神武天皇と申し奉るは、葺不合の御子にて、一天の主、百皇にも始めとして、天下を治め給ひしよりこの方、国土を傾け、万民の恐るる謀、文武の二道に如くはなし。
そもそも、日域(日本)秋津島(大和国)は、この、国常立尊(『日本書紀』・『古事記』で最初に現れた神)から始まり、宇比邇神(『古事記』に現れる神世七代の第三代の神。男神)・須比智邇神(『古事記』に現れる神世七代の第三代の神。女神)、男神・女神(宇比邇神・須比智邇神以降、『古事記』では男神・女神が対として現れる)を始めとして、伊弉諾尊・伊弉冉尊まで、以上天神七代に渡りました。また、天照大神から、彦波瀲武盧茲草葺不合尊まで、以上地神五代にて、多くの星霜([年月])を送りました。けれども、神武天皇(初代天皇)と申す帝は、葺不合の皇子で、一天下の主、百皇の始めとして、天下を治められてよりこの方、国土を傾け、万民が恐れる謀略は、文武二道に通じた帝はいませんでした。
(続く)