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「とりかへばや物語」巻一(その3)

いづれもやうやう大人び給ふままに、若君は浅ましう物恥ぢをのみし給ひて、女房などにだに、少し御前とをきには見え給ふ事もなく、父の殿をも疎く恥づかしくのみ思して、やうやう御文習はしさるべき事どもなど教へ聞こえ給へど、思しもかけず、ただいと恥づかしとのみ思して、御帳の内にのみうづもれ入りつつ、絵描き、雛遊び・貝おほひなどし給ふを、殿はいと浅ましきことに思しのたまはせて、常にさいなみ給へば、果て果ては涙をさへこぼして、浅ましう慎ましとのみ思しつつ、ただ母上・御乳母、さらぬは無碍に小さき童などにぞ見え給ふ。




どちらも成長されましたが、若君は情けないことに物怖じばかりして、女房にさえ、御前近くにいない者には姿を見せず、父の殿【権大納言】の御前でさえも恥ずかしそうにしておりました、そろそろ文([漢詩])を習わそうかと教えようとされましたが、意外なことに、ただ恥ずかしそうにするばかりで、御帳の中に隠れるようにして、絵を描いたり、雛遊び・貝覆い([貝合わせ])などで遊んでいるばかり、殿はとても嘆かわしく思われて、常に愚痴をこぼしておられましたが、果てには涙さえこぼすので、なんとも情けないほどに意気地のない者と思うばかりでございました、若君はただ母上・乳母、あとは無邪気な幼い童にしか顔を見せることはございませんでした。


続く


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by santalab | 2014-09-04 22:01 | とりかへばや物語 | Comments(0)

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