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「とりかへばや物語」巻一(その4)

さらぬ女房などの御前へも参れば、御几帳に纏はれて、恥づかしいみじとのみ思したるを、いとめづらかなる事に思し嘆くに、また姫君はよりいとさがなくて、おさおさ内にも物し給はず、外にのみつとおはして、若き男ども童部などと、鞠・小弓などをのみもて遊び給ふ。御出居にも、人々参りて文作り、笛吹き、歌謡ひなどするにも走り出で給ひて、もろともに人も教へ聞こえぬ琴笛の音も、いみじう吹きたて弾き鳴らし給ふ。物うち誦じ、歌謡ひなどし給ふを、参り給ふ殿上人・上達部などは、愛でうつくしみ聞こえつつ、かたへは教へ奉りて、この御腹のをば姫君と聞こえしは、僻事なりけりなどぞ、皆思ひ合へる。




見慣れない女房などが御前に参れば、几帳の内に隠れて、とても恥ずかしそうにするので、殿【権大納言】はどうすればよいのかと悩み悲しんでおられましたが、一方で姫君はまったく人怖じせず、部屋にいることはほとんどなく、外にばかりいて、若い男どもや童などと、鞠・子弓などをして遊んでおりました。出居([寝殿のひさしの内部にある応接用の部屋])に、人々が集まって文([漢文])を作り、笛を吹き、歌を謡っていると走り来ては、中に交じって誰も教えていない琴笛の音を、上手に吹き引き鳴らすのでございました。集まった殿上人([殿上を許された者])・上達部([公卿])などは、音を聞いては楽しみ、または教えて、こちらが姫君と聞いていたが、聞き間違いかなどと、思うのでございました。


続く


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by santalab | 2014-09-04 21:59 | とりかへばや物語 | Comments(0)

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