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「増鏡」叢時雨(その2)

山・三井寺みゐでら山階寺やましなでら仁和寺にんわじ、すべて大法だいほふ秘法ひほふ・祭り・祓へ、数を尽くして罵る様、いと頼もし。七仏薬師のほふは、青蓮院しやうれんゐんの二品法親王慈道じだう勤めさせ給ふ。金剛童子こんがうどうじ常住院じやうぢゆうゐん道昭だうせう僧正、如意輪の法、道意だうい僧正、五壇の御修法みしゆほふの中壇は、座主の法親王行はせ給ふ。如法によほふ仏眼の法は、昭訓門院せうきんもんゐんの御心ざしにて、慈勝じせう僧正うけたまはり行ふ。一字金輪きんりんは、浄経じやうきやう僧正、如法によほふ尊勝は桓守くわんしう僧正、愛染王あいぜんわう賢助けんじよ僧正、六字法は聖尋しようじん僧正、准胝法じゆんでいほふ達智門院たつちもんゐんの御沙汰にて信耀しんえう僧正勤めらる。その外、なほ本坊にて様々の法ども行はせらる。




山(延暦寺)・三井寺(現滋賀県大津市にある寺)・山階寺(興福寺。現奈良県奈良市)・仁和寺(現京都市右京区にある寺)、すべて大法・秘法・祭り([神仏・祖先を祀ること])・祓え、数を尽くして声を上げて唱える様は、とても頼もしいものでございました。七仏薬師の法([密教で、七仏薬師を本尊として、延命・息災・安産などを祈る修法])は、青蓮院(現京都市東山区にある寺)の二品法親王慈道(慈道法親王。第九十代亀山天皇の皇子)が勤められました。金剛童子の法([密教で、金剛童子を本尊として安産・除災・延命などを祈る修法])は、常住院(現京都市上京区にある寺)の道昭僧正、如意輪の法([如意輪観音を本尊 として福徳増起などのために修する秘法])は、道意僧正、五壇の御修法([真密教で、五壇=五大尊を安置する五つの壇。に祭った五大尊=不動・降三世がうざんぜ軍荼利夜叉ぐんだりやしや・大威徳・金剛夜叉こんがうやしやの五明王。を本尊として行う加持・祈禱。天皇や国家の重大事のときに、息災・調伏などを目的に行う])の中壇([中央の壇。不動明王の壇])は、座主の法親王(宗良むねよし親王)が行なわれました。如法仏眼の法([密教で、仏眼尊=智慧を生じる無限の功徳を備えた仏の眼相を 人格化したもの。大日如来などの変現。を本尊として息災を祈る修法])は、昭訓門院(藤原瑛子えいし。亀山院の后)の心ざしで、慈勝僧正が行いました。一字金輪の法([一字金輪仏=密教で大日如来が最高の境地に入った時に説いた真言の一字を人格化した仏。を本尊とする修法])は、浄経僧正、如法尊勝の法([尊勝仏頂を本尊として尊勝陀羅尼を誦する、密教の修法。息災・増益・滅罪・安産などのために行われる])は桓守僧正、愛染王の法([愛染明王を本尊にして修する密教の修法])は賢助僧正、六字法([六観音を本尊として調伏・息災などのために行う修法])は聖尋僧正、准胝法([密教で、准胝観音を本尊として、除災・治病・延命・求児などを祈願する修法])は達智門院(第九十一代後宇多天皇の第一皇女)の沙汰により信耀僧正が勤められました。その他、本坊([住職が住む僧坊])でも様々の法が行われたのでございます。


続く


by santalab | 2014-09-07 07:58 | 増鏡

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